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巻頭特集

2012年スマイル秋号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

体を動かして、
快適なPDライフを
PD患者さんのための
運動セミナー

腹膜透析(PD)患者さんの中には、「運動はできない」と思っておられる方もいらっしゃるかと思いますが、「適度に体を動かすことは、心身ともによい影響を与える」と言われています。今回は、読者の方から寄せられた質問をもとに、運動療法についての研究と指導をされている仙台社会保険病院の木村朋由先生にお話をうかがいました。

木村 朋由 先生

仙台社会保険病院

木村 朋由 先生
腎センター内科 部長

注目されている透析患者さんの運動療法

透析患者さんが運動することについて、どうお考えでしょうか?
木村先生
腎臓病患者さんの運動について、従来は運動が腎臓の負担になるという考えで、運動制限や安静が薦められていました。しかし近年は、QOLの向上や身体機能の維持の観点から運動療法への関心が高まっています。

透析患者さんでは、血液透析(HD)中に運動を行うなどの取り組みも行われていますし、腹膜透析(PD)の患者さんでは、仕事や学校など、健康な方と同様に社会生活をされている場合も多く、HDの患者さん以上に足腰や体力の維持が不可欠です。さらに、透析液から毎日約200~300キロカロリーのエネルギー摂取があり、知らないうちにメタボリック症候群に足を踏み入れてしまう恐れもあります。また、ご高齢の患者さんでは筋力の低下が、転倒など思わぬ事故につながることもあります。つまり、「適切な運動」は、PD患者さんにとってとても大切であると言えるでしょう。

運動と言っても、何か特別なことやスポーツをする、というのではなく、歩いたり体操したりと"体を動かす"ことも十分当てはまります。ぜひ、この記事を、体を動かすきっかけにしていただければと思います。

「継続」が何より大切

まず、最初のご質問です。
「お腹にカテーテルも入っているので、運動は避けなくてはいけないのかと思っていましたが、運動をしてもよいのでしょうか」(55歳女性)
木村先生
今、申し上げたように、適度な運動はむしろ推奨されていますので問題はありません。ただ、始める際には、まず主治医に相談することが望ましいですね。「ご自分にとっての適度な運動」はどの程度なのか、アドバイスを受けましょう。

それから、実際に体を動かす際に注意していただきたい点が2つあります。1つ目は、(1)透析液の貯留中は腹圧がかかる運動を避けることです。鉄棒や腹筋を使う運動などは行わないでください。そして2つ目は、(2)運動後はカテーテルの出口部を清潔にするということです。汗をかいたらそのままにせず、シャワー洗浄などして清潔にしましょう。
では次は、
「運動をしてみたいと思いますが、どんな運動がよいのかわかりません。まず、取り組みやすいものを教えてください」(67歳男性) というお尋ねです。
木村先生
先程の2つの注意点に気をつければ、基本的に患者さんの好きな運動をして大丈夫です。そして、大切なのは「継続」するということ。無理なく続けるためには、ご自身が好きな運動や手軽にできる運動を選ぶことが重要です。私がお薦めするのはウォーキングです。1人でもできて、お金もかからず、さらに場所も選ばずとメリットはたくさん。週2~3日のペースで始められる運動としてちょうどよいと思います。

翌朝まで疲れを残さない

3つ目の質問です。
「昔やっていたテニスやゴルフなどを再開したいと思っています。その際、どんなところに注意すればよいでしょうか」(60歳男性)
木村先生
体調が良好に保たれていれば、再開して大丈夫です。テニスやゴルフを元気にやっている方もいます。ただし、テニスやゴルフなど大きく腰をひねる動きがある運動は無理をしないように注意してください。

そして、どんな運動をする場合でも過度に疲労するものは避けることが大切です。ポイントは、「翌朝まで疲れが残っていないかどうか」です。翌日の朝まで疲れが残らない程度にしましょう。また、運動する際はカテーテルの固定をしっかりしてください。

運動は将来の寝たきり予防にもつながる

最後はご家族からの質問です。
「80歳でPDをしている母がいます。1日中家の中にいることが多く、じっとしているので、少しは体を動かしてほしいと思います。どのような運動がよいでしょうか?」(患者家族)
木村先生
気軽にできることから始めてもらってはいかがでしょうか。自宅内の簡単な歩行練習でも構いませんし、気分転換にもなるので散歩もよいと思います。しかし、せっかく始めた運動も、続けなければ意味がありません。そのためには好きな運動をしてもらうのが一番よいのですが、それが難しい時は別の動機づけをしましょう。たとえば「体脂肪が減った」など、数字上で目に見えた変化があれば、それを褒めることで達成感につながり、続けやすくなると思います。参考にしてみてください。

特にご高齢の患者さんにとって、運動は「寝たきり予防」という大きな意味があります。元気なうちは予想もつかないことですが、筋力の低下などから来る転倒で数日寝込むだけでさらに筋力が弱り、心肺機能低下や認知症などが一気に進行する恐れがあります。たった1週間の入院をきっかけに、全身が衰弱して数ヵ月のリハビリを余儀なくされる場合もあります。そうならないためにも、日頃から意識的に適度な運動を習慣づけて、将来の不安を減らしておくことは、大きな意味があると思います。
先生のご研究からも、運動の効用がわかっていますね。
木村先生
以前、当院でPD患者さんにおける運動療法の効果をリサーチしたことがありますが、運動(ウォーキング)を1年間継続することによって筋肉量や貧血・脂質代謝に改善が認められました。データの上でも、PD患者さんにおける継続的な運動療法は大変効果的だと言えます。ご自身の体調に合わせて、ぜひ楽しみながら運動を継続して、イキイキした明るいPDライフを送ってください。

「できること」から少しずつ始めましょう

看護科長田屋 恵子さん

もともと活発に過ごしていた方でも、PD治療を始めると、体を動かすことに尻込みしてしまう方を時々お見受けします。「運動」と堅苦しく考えてしまうと、できないことの多さを感じてしまうと思いますが、PDは、駅や空港などでもできますし、ホテルにバッグを配送することも可能です。PDには「できること」がたくさんあり、旅行や運動もその一つなのです。最初の一歩さえ踏み出せれば大きな自信につながるので、勇気を出して体を動かしてみてください。
木村先生のおっしゃる通り、最初は歩くことだけでもよいでしょう。デパートでウインドウショッピングをすることでもよい運動になりますし、家から出て、外の空気を吸いながら喫茶店でお茶を楽しむことも気分転換になります。いきなりすべてをやろうとせず、肩の力を抜いて少しずつ「できること」を広げていきましょう。

田屋 恵子さん

病院データ

仙台社会保険病院

仙台社会保険病院

  • 宮城県仙台市青葉区堤町3-16-1
  • 電話 022-275-3111
  • FAX 022-234-4194
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