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巻頭特集

2012年スマイル夏号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

腹膜炎を予防して、
快適なPDライフを

清潔を常に意識することが腹膜炎を防ぐ第一歩!
PD(腹膜透析)の代表的な合併症の一つである腹膜炎。快適なPDライフを送るためには、大切な腹膜をよい状態に保つことがとても大切です。今回の特集では、腹膜炎の基礎知識と予防について、日本医科大学武蔵小杉病院の先生と看護師の方々に、教えていただきました。

左から、酒井先生、大塚先生

左から、酒井先生、大塚先生

日本医科大学武蔵小杉病院

酒井 行直 先生
腎臓内科 講師
大塚 智之 先生
腎臓内科

腹膜炎の一番の原因はカテーテルからの細菌の侵入

腹膜炎とはどのような病気ですか?なぜ、腹膜炎になるのでしょうか。
腹膜炎は透析液をためている腹腔内で炎症が起きる病気です。その多くはバッグ交換時などにカテーテルを通じて細菌が入ることで起こります。

症状は主に腹痛で、発熱、悪心、吐き気、下痢、便秘が起きることもあります。腹痛や発熱といった症状は腹膜炎以外でも起こることがありますが、腹膜炎では、排液がにごるという特徴があります。腹痛があって排液がにごったら、ほぼ腹膜炎と言えるので、すぐに病院に連絡をして受診してください。また、排液は常にチェックをして、少しでも異常があったらすぐに病院に連絡してほしいですね。

治療は抗生物質を使って行い、たいていは3日ほどの入院で回復します。早期発見、早期治療を行えばカテーテルを抜くこともありません。
腹膜炎はPDを続けるにあたってどのように影響しますか。
腹膜炎になると腹膜を覆っている中皮細胞がダメージを受け、かさぶたができたような状態になってしまいます。広さ、厚みの限られた腹膜にかさぶたができてしまうと、腹膜の機能が落ちてしまいます。腹膜はPDの"命綱"と言えるほど、非常に大切な存在。PDを長く続けていただくためには、腹膜炎にならないことがとても重要です。

常に清潔を意識することが大切

腹膜炎の予防法は? 貴院では患者さんにどのように指導されていますか。
決められた手技を守ること、「清潔」を常に意識することが非常に重要です。当院では導入時の入院期間を長めにとり、CAPD・APDの操作をしっかり覚えていただくとともに、「一操作一手洗い」「マスクをつける」を徹底していただくようにしています。

また、出口部の状態は見た目ですぐにわかるので、患者さんには出口部のケアに意識を向けてもらっています。"一事が万事"で、出口部ケアをきちんと行うことが、PD治療に関わることすべてを「清潔」にという意識につながると考えています。

退院後の外来受診時にも、医師と看護師で時間をかけて診ていきます。慣れてくるとどうしても自己流になってしまいがちですし、同じ人でもケアの方法を変えた方がよい時もあります。毎回様子を見ながらきめ細かくお伝えして、常に「清潔」を意識してもらえるようにしています。出口部ケアのことなど、不明なことはそのままにせず、必ず主治医や看護師に聞きましょう。

こうしたことは患者さんだけでなく、ご家族にも伝え、共通の知識を持ってもらうようにしています。特に高齢の患者さんにとってはご家族のサポートは大きいようです。当院でも高齢の患者さんが多くいらっしゃいますが、大きなトラブルなく治療を続けておられます。

さらに、透析液バッグの切り離し・接続操作の時に感染のリスクがあることを考えると、APD(就寝時などに自動的に透析液の交換を行う腹膜透析)で交換手技を行う回数を減らすことも有効ではないかと思い、当院ではほぼ全員の方がAPDを使用しています。

そのほか、腸管からの感染もありますので、便秘、下痢をしないなど便通を整えることも大切です。
快適なPDライフを送るために患者さんにメッセージをお願いします。
PDは制約もありますが、正しい知識を持った上で行えば、これほど素晴らしい治療法はありません。PDを少しでも長く、快適に続けていけるよう、まずは出口部ケアをしっかり行い、「清潔」を意識して腹膜炎を防いでいきましょう。
毎日、出口部の観察を忘れずに
何かあればすぐに病院に連絡してください
患者さんには、医学用語や専門用語を使わず、イメージしやすいものにたとえるなど、わかりやすい言葉で話すことを心がけています。医療者には当たり前のことも、患者さんにとっては初めて経験することも多く、私たち医療者側の固定観念をなくすことも必要だと思っています。例えば、フィブリンが排液の中に散った時の様子を置物の「スノードーム」にたとえてみたり…。出口部を洗う石鹸も、私たちは"肌にやさしいもの"のつもりでも、患者さんは"殺菌力のあるもの"がいいと思っている場合もあります。また、よく「お風呂の時に出口部を観察」とされていますが、ご高齢の方などでは、毎日入浴しない方もいらっしゃいます。出口部は毎日観察し、清潔にしていただきたいので、シャワーだけでも毎日浴びていただくようにお話ししています。

また、腎臓の機能や病気の基礎的な知識や、治療やケアの意義もお伝えするようにしています。意義や理由がわかることで、治療や手技・清潔への理解は高まると考えるからです。例えば、「接続操作の時にくしゃみが出て、マスクをつけていなかったばかりに、腹膜炎になった人もいるんですよ」とお話しすると、マスクが必要な理由が理解でき、着用につながります。

腹膜炎予防には毎日の出口部のケアがとても大切です。患者さんとご家族で毎日異常がないかよく観察し、少しでも心配なことがあれば何でもいいのですぐに病院に相談してください。

日本医科大学武蔵小杉病院
血液浄化療法室 透析看護認定看護師
前田幸生さん

まとめ

    腹膜炎の症状

  • 排液がにごる
    排液は必ず毎回確認を。
  • 腹痛
    そのほか、発熱、悪心、吐き気、下痢、便秘の症状が出ることも。
  • 予防

  • 清潔を心がける
    特に、出口部のケアは大切。毎日観察を。
    一操作一手洗い、マスクをつけることを徹底しましょう。

日本医科大学武蔵小杉病院 腎臓内科の取り組み

日本医科大学武蔵小杉病院は、救命救急センターを有し、大学病院として高度で良質な医療の提供を行っています。腎臓内科では、腎臓病のどの段階でも対応できる体制をチーム医療で支えています。腹膜透析については、患者さんが快適に治療を続けられるよう、充実した導入時教育、外来時のきめ細やかな確認や指導を実施しています。

腎臓内科のスタッフの皆さんと患者さん 腎臓内科のスタッフの皆さんと患者さん

病院データ

日本医科大学武蔵小杉病院 腎臓内科

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