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巻頭特集

2013年スマイル春号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

「食塩」「リン」
「食べ過ぎ/食欲不振」、
食事の三大悩みにお答えします!

昨年実施した食事に関するアンケートに多くの悩みをお寄せいただきましたが、中でも飛び抜けて多かったのが「食塩」コントロールの難しさ、続いて「リン」と「食べ過ぎ/ 食欲不振」でした。この三大悩みについて、日々、PD患者さんの栄養指導に当たる管理栄養士の先生にお答えいただきます。ぜひ、食生活改善にお役立てください!

市川和子先生

川崎医科大学附属病院

市川 和子 先生
栄養部課長 管理栄養士

食塩コントロールのコツ
基本は「味にメリハリをつける」

「塩分を抑えるのに苦労しています」「塩分を控えた食事を作るのが難しいことがある」「もともとしょっぱいものが好きなのに漬け物が食べられなくてとても苦しく思っています」など、多くのPD患者さんが食塩のコントロールに苦慮されています。
まず、"塩分"という言葉ですが、この場合、「1日に摂取する食塩量」の話ですから、 "食塩"とした方がわかりやすいと思いますので、以後、"食塩"とさせていただきますね。それから、認識として大事なのは、食塩を抑えるのは相当な努力と工夫がいる、ということ。健康な人が1日9グラムのところ、半分以下の3~3.5グラムの患者さん、2.5グラムの方もいらっしゃいます。「おいしい」と感じる食塩量をかなり下回らなければなりません。それを理解した上で、さまざま工夫をしていきましょう。

一番の基本は「味にメリハリをつけること」です。限られた食塩量ですから、全部に均一に味をつけるのではなく、どれか1品、舌で感じる濃度を1%以上にします。たとえば、おかずはうす味でも、最後にしっかり塩気が感じられる漬け物や梅干し1個をいただくと満足できます。揚げ物も塩を使わずにでき、熱々なら調味料がなくてもおいしくいただけますので、その分他のものに塩を使えます。難しいのは和食の献立です。かくし味に塩を使うことが多いのですが、それはやめましょう。酢の物に使うきゅうりも塩ではなく、砂糖でもんでから、酢で味つけします。こうすれば無塩でOKです。また、1食の中で煮物と汁物どちらかにする、と覚えておくとコントロールがうまくいきます。献立を考える時、「主菜、副菜、ごはん…、きょうはどこに塩気を集中させようか」と、とにかく1点集中を心がけてください。1食の中に、塩味・甘味・酸味・苦味・辛味、そして旨味がバランスよく入っていること。それがおいしい食事ということになりますが、特に私のおすすめは、香辛料です。カレー粉、黒こしょう、山椒、七味…。七味などはいろいろな種類がありますね。好みのものを使って、味に変化をつけて食塩を抑えましょう。たとえばドリアでは、ピラフはカレー味にして塩を使わず、ホワイトソースに塩分1.5%としっかり味をつけたところ、患者さんに大変好評でした。

買物の際には、食品表示に多く使われるナトリウムの食塩換算方法を覚えておくと便利です。ナトリウムの量(mg)÷ 400≒食塩1g相当量 となります。

リン コントロールのコツ
リンの多い食品を知る・自分の摂取量を知る・薬は正しく飲む

「ほとんどのものにリンが入っているので、何を食べていいのかわかりません」「リンの値が高く、薬で随分下がってきたのですが、乳製品、特にチーズが大好き。ウィンナー、ハム、シーフードも大好き。いつも食べたいものを我慢しています」という声が…。リンへの対処方法を。
料理の基本は、「きょうは何が食べたいか」。その思いを大切にすれば、工夫することへの意義も感じられるのではないでしょうか。

さて、リンです。ポイントは3つです。

(1)リンの多い食品を知る…リンは砂糖と油以外のほとんどの食品、特にたんぱく質の多い食品に多く含まれています。乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)、レバーや卵類、丸ごと食べる小魚(しらす干し、ちりめんじゃこ、ししゃもなど)。食品成分表などで勉強してください。
中でもチーズは少量でも多いので、小さなものを1つとか、パルメザンチーズを料理に少量使って、香りを楽しむ程度工品には要注意です。加工品に含まれる添加物にリンが多いのですが、どれだけ含まれているか表示がないのでわかりません。対策としては、練り物は茹でて表面の添加物を落とす、インスタントラーメンの茹で汁は捨ててスープは新しいお湯で作るなどが考えられますが、1食の中で加工品を重ねて食べない、ということも心に留めておきましょう。

(2)自分の摂取量を調査する…ガイドラインでは、リンは摂取たんぱく質(g)×15 以下に抑えるとされています。まず、ご自分がどれだけリンを摂っているか知ること、また検査結果の数値がどうなのかも把握しておく必要があります。現実を知らなければ、的確な対処方法も見つかりません。ただ、わからない場合は、ぜひ管理栄養士に聞いてください。それから、食事の記録を取ることもお勧めしたいです。書かなくてもいいんです。デジカメでパチパチ撮って、それを見せていただければ大体わかりますので、アドバイスできます。食事療法のプロである管理栄養士をもっと活用していただきたいと思います。

(3)薬を正しく飲む…リンの吸着剤は医師の指示通り、服用する時間と量をきちんと守ってください。案外、間違ったタイミングで飲んでいたりする患者さんをお見受けします。そうすると、十分な効果が得られず、リンがさらに制限されてしまいます。

「食べ過ぎ/食欲不振」コントロールのコツ
どんな場合も「ゆっくり噛む」ことは重要!

「よく動くので食事がおいしくなり、ついつい食べ過ぎてしまう」「魚、肉のおかずの制限がつらい。満腹まで食べてしまう」。反対に、「時々、吐き気がして、食欲がなくなります。透析液がお腹に入っているからかもしれませんが、こういう時、食べやすく食欲が出る食事があれば、内容、食べ方について教えてほしい」との悩みが寄せられました。
まず、「食事がおいしい」、これは素晴らしいことと申し上げたいです。食事がおいしいというのは、幸せの条件の一つだと私は思っています。PDの状態も良好であると言えますね。ただ、過ぎたるは及ばざるが如しで、過体重になるとあらゆる弊害が出てきますので、基本は「腹八分目」です。「腹八分目」にするにはカンタンなコツがあります。それは、「ゆっくり噛んで食べること」。ただそれだけです。よく噛みしめると幸せも噛みしめられますよ(笑)。

血糖値が上がる前の5~10分で食べてしまっては早過ぎます。糖尿病食(1. 1日3食を規則正しく、バランスよく 2. 主食は計量し、おかずは適量に 3. 甘いものは控える)をイメージされるとよいでしょう。食事の際は、野菜から食べ始めましょう。繊維質を意識して摂ることもお勧めです。

食欲不振の方は、栄養不良~体調不良につながり、より心配です。3食以外に100グラム程度の軽食を摂るようにし、エネルギー不足の方はプチ蒸しパンやビスケットなどの炭水化物、栄養状態の悪い方はたんぱく質を摂りましょう。透析液による腹部膨満で食欲がない方は、排液後、お腹が空になった状態の時に食事をしてみてください。

患者さんに特に申し上げたいのは、「噛む」ということの重要性です。噛むことで唾液が分泌されますが、唾液には免疫面や殺菌効果が期待できます。また、噛むことで側頭葉が刺激され、大脳に伝達されることがわかっており、認知症予防にもなります。ぜひ、お箸を使ってゆっくり噛む食事を心がけてください。

川崎医科大学附属病院 腎臓内科の取り組み

腎臓・高血圧内科学 教授・腎センター長佐々木 環 先生

当院では、腎不全患者さんの食事指導において、保存期からPD導入後まで、連続性のある指導・治療を目標に取り組んでいます。データから見ても、保存期からのきめ細かな管理栄養士の介入が、患者さんの状態を良好に保つことがわかっています。
一方で高齢化する患者さんをサポートするため、訪問看護ステーションとの連携など、社会資源の整備に取り組むことで、どなたでも安心してPDを行っていただける体制を目指しています。
PDは、在宅治療ですので、ご家族にも関わっていただくことになりますが、「お腹に点滴をするようなもの」で、決して難しい治療でも特殊な治療でもなく、多くのメリットがある治療法と考えています。透析導入時の患者さんにとっての重要な治療法として、今後もPDのメリットを伝えていきたいと思います。

佐々木 環 先生

病院データ

川崎医科大学附属病院 腎臓内科

  • 〒701-0192
  • 岡山県倉敷市松島577
  • 電話 086-462-1111(代表)
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