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巻頭特集

2013年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

糖尿病と腹膜透析
正しく知って上手にコントロール

透析導入の原疾患第1位である糖尿病腎症。透析を新たに始める方の内、40%以上が糖尿病からとなっています。糖尿病やその合併症をうまくコントロールしていくことは、糖尿病を持つPD 患者さんが快適な生活を送る上で非常に大切です。そこで、今回の巻頭特集では、糖尿病腎症の特徴や自己管理のポイントを教えていただきました。糖尿病ではない方にも参考になるポイントもありますので、ぜひ、良好な療養生活にお役立てください。

左から、高原先生、濱田さん、森山さん、平井さん

左から、高原先生、濱田さん、森山さん、平井さん

赤穂市民病院

高原 典子 先生
内科部長
濱田 福加さん
人工透析部看護師
森山 慈子さん
人工透析部看護師
平井 美幸さん
人工透析部看護師

腹膜透析(PD)導入後も、並行して糖尿病や合併症の治療を

まず、糖尿病腎症という病気の特徴についてお教えください。
高原先生
糖尿病腎症をお持ちの患者さんは同時に様々な合併症を有していることが大きな特徴です。心血管障害が進んでいたり、尿たんぱくが多く、体内の水分が過多になっていたりする傾向があります。また、末梢神経・自律神経への障害や網膜症にも十分な配慮が必要です。
糖尿病腎症のPD患者さんが、日頃の生活で留意するべきことは?
高原先生
糖尿病のあるなしにかかわらず、PDを良好に継続するには「水分管理」が一番大切です。それに加え、糖尿病のある患者さんは「血糖コントロール」も重要となります。それには正しい知識に基づく自己管理が必要となってきますが、当院では、糖尿病も腎臓病も同じ内科で診療に当たり、糖尿病や保存期の教育入院、糖尿病透析予防外来等で、それぞれ段階的に自己管理を身につけていただいています。透析が始まると、糖尿病の治療の方に注意が行かなくなる方もおられますが、透析導入後、腎臓病と糖尿病で主治医が分かれてしまう場合でも、糖尿病をはじめ眼科やフットケア、循環器科などの受診をおろそかにせず、並行して治療を続けてほしいと思います。

透析導入患者の原疾患

PDの糖尿病患者さんは、血糖コントロールが比較的容易

「血糖コントロール」について詳しくお願いいたします。
高原先生
血液透析(HD)の患者さんでは、HD後に低血糖を起こしやすく、糖尿病によって神経障害が進展していると、自覚症状がない"無自覚性低血糖"となり、心血管合併症を進めてしまう可能性があることが、最近の研究でわかってきています。PDはHDのように透析中にブドウ糖が抜けて低血糖を起こすリスクは少なく、また、毎日の治療ですから、HDのように透析治療を行う日と行わない日で血糖値に大きな変動が出ることもありません。血糖を良好にコントロールするために、HDでは服薬やインスリン注射を透析治療がある日とない日で変えなくてはならないので、特に高齢の患者さんでは自己管理が難しくなります。PDではそれがないので、低血糖リスクも少なく、自己管理しやすい、というメリットがあると思われます。
透析液にブドウ糖が含まれていることを心配される患者さんもおられますが。
高原先生
当院で、ブドウ糖2.5%の透析液2リットルをお腹に入れ、2時間ごとに血糖値の変化を調査したところ、糖尿病を持つ患者さんであってもインスリン注射をしていない方では、血糖値の上昇はあまりありませんでした。実際の治療では、可能な限り低濃度(1.5%)の透析液や、ブドウ糖を含まないイコデキストリンの透析液を用いることになりますので、インスリン注射をしていない患者さんでは、過度に心配する必要はないと、我々のデータから考えられます。
「感染症」についてはいかがでしょうか?
高原先生
他の手術などでも同じですが、最近は糖尿病だからといって血糖コントロールが良好であれば感染リスクはさほど問題にしなくてもよいと考えられています。当院のPDの継続率で見ても、糖尿病があるか否かで有意差は出ていません。通常にきちんと清潔操作や出口部ケアをしていれば、感染リスクはあまり危惧しなくてもよいでしょう。

自己管理のポイントは、「水分管理」と「フットケア」

それでは、自己管理のポイントを具体的にうかがっていきます。最初に先生が「一番大切」とおっしゃった「水分管理」からお教えください。
高原先生
除水ができないからといって、すぐに透析液を濃度の濃いものに変えるのではなく、まず「水分管理」、つまり塩分など食事や生活の見直しをしていきます。
森山さん
当院の例では、3ヵ月に1回、「飲水チェック」を行っています。患者さんに、ある1日の飲んだ水分量と尿量を記入してきていただき、状況を確認します。
濱田さん
若い患者さん、仕事をされている方は外食が多くなりがちですので、食事内容の聞き取りをしながら、パンフレットを用いて、気をつけるべき点を説明します。
森山さん
どのようなメニューを選べばよいか、患者さん一人ひとりの状況に応じてお話しし、カレーの福神漬けは残す、おそばのおつゆは薄めるなどのアドバイスをしています。
高原先生
定期的な飲水チェックによって、「意外に飲んでいる」「尿量が減ってきた」など、ご自分の状態を数字で把握することができ、強制されるのではなく、自ら生活改善への意欲がわいてきます。また、PDを始めると体調がよくなり、食欲が出て体重が増えてしまうケースがあります。糖尿病のある患者さんが体重オーバーになると血糖コントロールも難しくなりますので、これには注意が必要です。
患者さんのご家族の協力についてはどのようにお考えでしょうか?
濱田さん
非常に大切だと思います。ご本人の体調が悪い時は、ご家族にも気をつけていただきたいことをお話しさせていただいています。
高原先生
治療の主体はもちろんご本人ですが、糖尿病腎症の患者さんは視力障害をお持ちの方もおられますし、まずは、ここまではご本人が、ここからはご家族や介助者にしてもらう、という線引きを、医療者側から提示して確認することが大切と考えています。また、治療をしていく中で問題点や疑問も出てきますので、心配事や不明な点は、ぜひ医師や看護師に確認してください。
「フットケア」も自己管理のポイントですね。
高原先生
糖尿病を持つ患者さんの「フットケア」の重要性については、ご存じの方も多いと思います。末梢神経障害によって傷ができても痛みを感じにくくなっていますので、靴ずれから壊疽になってしまう場合もあり、脚の切断予防の見地からも、積極的に自己管理をしていく必要があります。
平井さん
四肢壊疽の発生率は、一般人1に対して糖尿病患者さんでは1.63倍、糖尿病ではない透析患者さん(HDも含む)では82.6倍、糖尿病の透析患者さんでは何と481.1倍というデータ(『月刊ナーシング』2010 Vol.30No.9)もあります。当院では、非糖尿病の透析患者さんは半年に1回、糖尿病の透析患者さんは3ヵ月に1回、透析室の「フットケア」を行っています。自宅での自己管理としては、(1)足をよく見る (2)毎日せっけんで指の間まで洗って清潔にする (3)深爪や傷を作らないように注意して、もし、傷や水虫、タコ・魚の目などがあったら自己流で治そうとせず、医療者に見せる、以上3つの項目がポイントとなります。簡単ですので、ぜひチャレンジしてみてください!

患者さんと医療者、相互のコミュニケーションを大切に

最後に、PD患者さんへのメッセージをお願いします。
森山さん
PDは残腎機能を保持でき比較的自由度の高い治療法ですので、ぜひPDライフをエンジョイしていただきたいと思います。困ったり、悩んだりしたら、いつでも私たち看護師に相談してください。
濱田さん
自宅で一人で治療されていて、本当にがんばっていらっしゃると思います。外来では少しでも皆様のお役にたてるように看護師がサポートさせていただきますので、何でも聞いてくださいね。
平井さん
ご自分の足を、すみからすみまで観察してみましょう! 「フットケア」にも注目してください。
高原先生
常々思っているのは、患者さんは偉いな、ということです。日々、血糖値を測り、食事に気を配り、インスリン注射も自分で行う方もいる…。さらに毎日のPDも。医療者としては、患者さんに充分納得して治療を継続していただける様、病状やリスクなどについてきちんと伝えなければなりません。それが、患者さんの行動変容、つまり自己管理につながります。今後はますます様々な選択肢から治療を選んでいく時代になります。そのために相互のコミュニケーションをより大切にしたいと考えています。
人工透析部スタッフの皆さん 人工透析部スタッフの皆さん

病院データ

赤穂市民病院

赤穂市民病院

  • 〒678-0232
  • 兵庫県赤穂市中広1090番地
  • 電話 0791-43-3222
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