1. 腹膜透析(PD)情報サイト トップ
  2. 快適な腹膜透析(PD)ライフのための情報誌「スマイル」
  3. 巻頭特集
  4. 感染症を予防して、夏を快適に過ごしましょう!

巻頭特集

2015年スマイル夏号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

感染症を予防して、
夏を快適に過ごしましょう!

汗をかきやすいこの季節、出口部などの感染にいつも以上に気を使う方も多いと思います。今回は腹膜透析(PD)患者さんの大敵である感染症について、予防のポイントや日々の心構えをうかがいました。

左から、松本さん、斎藤さん、猪阪先生、北村先生

左から、松本さん、斎藤さん、猪阪先生、北村先生

大阪大学医学部附属病院

猪阪 善隆 先生
腎臓内科 診療科長
大学院医学系研究科 老年・腎臓内科学 准教授
北村 温美 先生
腎臓内科
中央クオリティマネジメント部 副部長
斎藤 文子さん
東3階病棟 看護師長
松本 稔子さん
東3階病棟 看護師

「これくらい大丈夫」という油断が感染の原因に

PD患者さんが特に気をつけるべき感染症にはどんなものがありますか?
北村先生
大きく分けると、腹膜炎とカテーテルに関連した感染症があります。細菌などの感染による腹膜炎を繰り返すと、腹膜の機能の低下につながったり、被嚢性腹膜硬化症という重篤な合併症のリスクが高まると考えられています。PDを長く続けるには、腹膜炎の予防が非常に重要になります。

一方、カテーテルに関連した感染症とは、カテーテルの出口部や皮下トンネル(カテーテルが皮膚のすぐ下を通っている部分)が感染した状態を言います。出口部の感染が皮下トンネルへ深く侵入していくこともあり、そのまま放置すると腹膜炎を引き起こす可能性もあります。カテーテル関連の感染症は早期に発見し、ケアすることが重要です。
PD患者さんの中でも、感染症にかかりやすい人はいますか?
北村先生
高齢の患者さんでは、目や手先が不自由な方が操作を誤ってしまったり、若い患者さんでは、操作が自己流になってしまったりして接続チューブが不潔になり、腹膜炎を発症することが多い傾向があります。実際、当院のデータでは20~30歳代と70~80歳代の患者さんに、腹膜炎の回数が多い傾向でした。ただ、年齢に関わらず、「これくらい大丈夫だろう」という油断が感染につながることが多いと言えますね。

出口部感染は、出口部の周囲に傷ができたり、本来は密着しているカテーテルと周囲の皮膚の間に隙間ができていたりすると、そこから菌が侵入して感染が起きやすくなります。そのため、皮膚の乾燥や湿疹、アトピー性皮膚炎などにより皮膚の状態が悪い方は出口部感染のリスクが高くなります。
猪阪先生
腹膜炎を起こす患者さんには、何回も繰り返してしまう方もおられます。自分では清潔を保っているつもりでも、気づかない部分で感染を招いてしまっている場合もあります。訪問看護師や介護スタッフの手を借りて、客観的な目で確認してもらうのもいいと思います。

腹膜炎予防の基本はマスクと手洗い

腹膜炎の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
北村先生
腹膜炎の感染経路はいくつかありますが、多いのはやはりバッグ交換操作に伴うものです。当院の研究では、口腔常在菌(口の中のさまざまな常在菌)が原因で腹膜炎を起こした方は、その後も繰り返す傾向があるとわかっており、その方々は手洗いやマスクを忘れることが多い傾向もみられました。PD患者さんへのアンケートでは、マスクをせずにバッグ交換をしていると答えた方が意外と多かったので、「ベテランになっても基本を忘れないように」と外来ではまめに声をかけるようにしています。腹膜炎を防ぐために、自分でできる「手洗いとマスク」は必ずきちんと行いましょう。腹膜炎の症状としては、腹痛や発熱などがありますが、一番気づきやすいのは排液のにごりです。排液がにごっていたら、すぐに病院に連絡してください。
腹膜炎を起こさないよう、清潔を保つポイントを教えてください
松本さん
バッグ交換を行う部屋は、掃除をしてほこりが舞い上がらないようにすること。また、交換時に近くに人がいるようであれば、その方にもマスクを着用してもらいましょう。

自宅では、器械を置く場所やベッドの向きが病院と異なり、操作しづらいこともあります。ご家族や訪問看護師に相談して、安全にバッグ交換ができる環境を整えてほしいですね。
斎藤さん
夏はうっかりしがちですが、エアコンや扇風機を切ってからバッグ交換を行ってください。そのために、交換時間の前までに部屋を十分に冷やしておいたり、冷却枕を使用したり、音楽をかけてリラックスするなど、自分で涼しくなる工夫をしてもらうといいと思います。

出口部感染の予防には季節に合わせたケアも大切

出口部感染を予防するために大切なことを教えてください
北村先生
第一に、出口部を清潔に保つことです。毎日のシャワーでは裏側まで泡状の石鹸でよく洗い、十分流した後、水分をよく拭き取ってください。出口部の異常は皮膚が赤くなっていたり、痛みがあったり、膿が出ている場合はわかりやすいのですが、痛みもなく、ちょっとかさぶたになっている程度では、気づかないことがあります。ご自身では出口部の状態が確認しづらいこともありますので、ご家族や訪問看護師に、患者さんが寝た状態で観察してもらうのもお勧めです。
松本さん
カテーテルが引っ張られると、出口部の皮膚とカテーテルの間に隙間ができるので、しっかり固定することも大切です。まず自然な方向に1ヵ所テープで留め、そこから収納位置に向けた方向に持っていくのが固定のポイントです。固定用のテープも、ご自身の肌に合ったものを見つけてください。テープかぶれやかゆみがもとで、傷ができることもあります。テープが合わないと思ったら、医療スタッフに相談してみてください。

また、夏は出口部の奥まった部分が汗で湿った状態になりやすいので、シャワーで汗や汚れをきちんと洗い流してしっかり水分を拭いてください。冬は乾燥しやすいため入浴後の保湿が重要になります。季節によってケアのポイントが変わることも押さえておいていただきたいですね。
  • ※出口部の状態によってケアの方法は異なりますので、主治医の指示に従ってください。
最後にPD患者さんへのメッセージをお願いします
猪阪先生
腹膜炎を起こさないことが腹膜機能を保つことにもつながります。そのためにも時には、自分が「清潔」を保てているか、医療スタッフや介護者にチェックしてもらうなどして、感染症を防いでください。
北村先生
PDは自分で行う治療法ですので、自己管理が大変だと思うことや落ち込むこともあると思いますが、家族や訪問看護師など周りのサポートをうまく利用して、自己管理に気をつけながらも、生きがいを大事に、生き生きとした毎日を過ごしてほしいですね。
斎藤さん
最近は高齢でもPDを選択される方が増えています。年齢を重ねるにつれて、今までできていたことができなくなることもあると思いますが、そんな時は「たくさんの目を借りる」という気持ちで、サポートを増やすことも大切だと思います。
松本さん
夏は出かける機会も多くなり、家庭と違う環境でバッグ交換を行うこともあると思います。「手指消毒ジェルを持って行く」など、いろいろなアドバイスができると思いますので、安全に旅行が楽しめるよう事前に相談していただきたいですね。
大阪大学医学部附属病院 スタッフの皆さん 大阪大学医学部附属病院 スタッフの皆さん

大阪大学医学部附属病院 腎臓内科の取り組み

1960年代から慢性腎臓病(CKD)の治療に力を入れ、集学的な治療が積極的に行われています。また、腎代替療法については、「将来的には透析が必要となる可能性があることも踏まえ、スムーズに移行できるように万全の備えをしています」と猪阪先生が話すように、同院では、透析が必要となる患者さんに対して「腎代替療法選択外来」を設けて、HD、PD、腎移植を含めた治療を一緒に考えていく方法をとっています。「患者さんの不安や疑問を取り除くことができるように、女性医師と看護師が親身になって患者さんの話を聞くようにしています。

近年では自分の生活スタイルに合わせてPDを選択する患者さんも増えてきました」と猪阪先生。PDの説明では、DVDや、人形を使用したり、実際に患者さんの治療の様子を見てもらったりもしているそうです。「治療をできるだけ患者さん自身の目で確かめていただくことも「腎代替療法選択外来」の役割だと思っています」。

病院データ

大阪大学医学部附属病院

大阪大学医学部附属病院

  • 〒565-0871
  • 大阪府吹田市山田丘2-15
  • 電話 06-6879-5111(代表)
ページトップ