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巻頭特集

2016年スマイル夏号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

「もしも…」の時に備えて
—PD患者さんの災害対策—

「もしも災害が発生したら、治療はどうしたらいい?」「日頃から準備しておくべきことは?」など、災害に関して不安や疑問を抱いている腹膜透析(PD)患者さんは多いのではないでしょうか。そこで今回は、PD患者さんがやっておくべき災害対策や災害時の心構えについて市立島田市民病院人工透析室のスタッフにお聞きしました。

左から、小沼さん、鈴木先生、安田さん

左から、小沼さん、鈴木先生、安田さん

市立島田市民病院

鈴木 訓之 先生
腎臓内科 医長
安田 智佳さん
人工透析室 師長代理
小沼 由美さん
島田市立看護専門学校 教務課 専任教員
野垣 文昭先生
腎臓内科 主任部長

災害時にも治療を続けられるよう、日頃から必要な物品の準備を

災害に備えて、PD患者さんが日頃から行っておくといいことを教えてください
鈴木先生
PDは血液透析(HD)と違って、施設に行かなくても適切な場所と透析液・機材があれば治療を行えるというメリットがあります。このようなPDの強みを活かすためにも、患者さんご自身が災害時に治療を続けられるよう準備をしておいていただくといいですね。
安田さん
用意しておいていただきたい物品としては、まずは懐中電灯やヘルメット、保険証のコピーといった通常の災害対策に含まれるもの。当院では、それに加えて、治療に必要な透析液や備品の在庫(5日分)、透析液加温用の携帯カイロ(10個以上)※1、カテーテルケアのための用品(綿棒、消毒薬、ガーゼ、テープなど)、除菌のウェットティッシュなどを用意するように伝えています。また、非常食はできれば塩分やカリウムが調整された腎臓病食を用意しておくといいですね。ただし、消費期限が通常の非常食(3~5年程度)と比べて1年程度と短いので、年に1回、他の物品とあわせて見直すのがお勧めです。
野垣先生
災害時にどのような対応をとれるかは、病院によっても異なります。あらかじめかかりつけの病院の対応を確認した上で、それを踏まえた準備を行っておくといいでしょう。
  • ※1:災害時のみの特別な方法です。透析液の加温に使い捨てカイロを使用する場合は、医療従事者の指示に従ってください。

いざ災害が発生したら……落ち着いて、自分自身の安全を確保

PDを行っている最中に災害が発生したら、どのように対応すればいいでしょうか?
小沼さん
まずは落ち着いて、自分の身の安全を確保してください。地震の場合、起震車で揺れを体験してみるとわかるのですが、揺れている間は何もできません。PDの機器や周囲の家具が動いてカテーテルが引っ張られる危険性がありますので、カテーテルをしっかり握って固定し、揺れが収まったのを確認したら、切り離し操作をして避難しましょう。
避難生活を送る上での注意点を教えてください
安田さん
PDに関していえば、CAPDの方は透析液や備品があれば避難先でも継続して治療が可能です。停電などで電源が得られない場合でも、くり~んフラッシュをフル充電してあれば8回程度使用できます※2。手動での操作もできる※3ので、手技を確認しておきましょう。一方、APDの方は停電時には治療継続は困難です。ただ、過去の災害時の記録によると、発生から3日程度で治療が再開できていたことから、当院では、3日間は事前に処方されているカリウム吸着薬を摂りつつ、食事や水分を制限して治療再開を待つよう患者さんにお願いしています※4
小沼さん
避難中の食事は、前述した非常用の腎臓病食が望ましいですが、入手できない場合は通常の非常食や避難先の配給食品を工夫して摂るようにしてください。非常食や配給食品の多くは塩分が高いので、おにぎりの梅干しは取り除く、しょうゆ、ソースはかけないなどのひと工夫が大切。普段よく食べる食品の塩分やカリウムの含有量を知っておくと役立ちます。
鈴木先生
塩分は高血圧や体重増加の原因になりますし、高カリウム血症は不整脈など深刻な症状につながります。避難先で透析ができない間は塩分とカリウムの摂取は、いつもの半分程度を目標にしてください。
安田さん
飲み水は1日400mL、排尿のある方では400mLに尿量を足した量を目安としています。
  • ※2:「つなぐ」の場合は、停電時には専用の電池ケースとEneloop(エネループ)8本を使用します。
  • ※3:緊急用手動操作時は紫外線照射はされません。使用方法は医療従事者の指示に従ってください。
  • ※4:CAPDに切り替える方法もあります。停電時の対処方法はかかりつけ医療機関にご確認ください。

年1回のPD患者さん向け災害対策勉強会で、災害への意識を高める

貴院では、PD患者さん向けの勉強会を年1回行っているそうですね
安田さん
東日本大震災の後、PD患者さんから「今地震が起きたら、何も準備していないから不安」と言われたのがきっかけで、看護師が中心となって3年前から始めました。1回2時間で過去に3回開催しています。

勉強会では、看護師が災害への備えや災害時の行動、食事などについて説明した後、体験型の学習を行います。たとえば、暗闇で懐中電灯を首から提げてバッグ交換を行ってもらったり、デモンストレーション用のお腹のモデルを使って、ウェットティッシュでのカテーテルケアを体験していただいたりしました。また、災害時に配られる食品の塩分やカリウムの含量を学ぶため、おにぎりやアンパンなどの絵を描いた紙の裏にその塩分量とカリウム量を書いて、参加者に1日分の食事を選んでいただきました。低いと思って選んだ食品が、意外に高塩分、高カリウムだったりして、認識を新たにされた患者さんもいらっしゃいました。
野垣先生
PD患者さんはHD患者さんと違って、治療の際に顔を合わせる機会が少ないことが多く、孤立しがちです。こうした勉強会に積極的に参加いただくことで、同じ治療を続けている患者さんやご家族同士が親しくなれるのも、勉強会の大きなメリットですね。
小沼さん
勉強会の後、APDの機械の下に滑り止めを敷いた、首から提げる懐中電灯を準備したなど、実際に行動に移された方もいらっしゃいます。非常時の対策については、どの病院でもPD導入時に看護師などから説明があると思いますが、忘れてしまう患者さんも多いようです。勉強会がなくても、最初に病院から配られたパンフレットなどを見直してみると、いろいろな情報が得られると思います。

周囲に遠慮しすぎず、PDについて積極的に伝えてほしい

災害時の心構えとして大事なことは?
安田さん
まずは、災害が起きる前に、常日頃からしっかりと準備をしておくことが一番大切です。その上で、災害時には「自助(自分で自分を助ける)・共助(家族、地域で助け合う)・公助(行政による救助、支援)」の考え方に基づいて、助けが来るのを待つだけでなく、自分でできることがないか考えて行動し、周囲の力も積極的に借りていきましょう。
小沼さん
PD患者さんは、他人に迷惑をかけることを気にされて、手助けを求めないことも多いのですが、避難先では遠慮せずに自分がPD治療を行っていることを伝え、安全な場所の確保に努めてください。
鈴木先生
災害はいつ起こるかわかりません。災害時の持ち物や注意事項についても確認して、常に準備を整えておけるといいですね。勉強会が「自分にできること」を考えるいいきっかけになればと思っています。
腎臓病関連スタッフの皆さん 腎臓病関連スタッフの皆さん

市立島田市民病院 腎臓内科の取り組み

静岡県中部に位置する島田市が運営している同院。市内に透析ができる施設が同院を含め2ヵ所しかないこともあり、地域の医師会と連携をとりながら、保存期~透析医療までの診療で中心的な役割を果たしています。保存期の診療では、同院の他科を受診した患者さんで腎臓の数値が悪い人がいた場合、腎臓内科へ連絡がいく「キドニー・サーベイランス」というシステムを導入。早期からの腎臓病治療の開始に積極的に取り組んでいます。透析治療では、山間部から通われる患者さんや高齢の患者さんが多いため、自宅で行えるPDの導入に力を入れています。患者さんができるだけストレスなく治療を開始できるよう、療法選択時の説明や手技の指導などは、時間をかけて丁寧に行っているそうです。さらに、2016年度には市内に24時間体制の訪問看護ステーションを立ち上げ、よりいっそう充実した患者サポートの展開が期待されています。

病院データ

市立島田市民病院

市立島田市民病院

  • 〒427-8502
  • 静岡県島田市野田1200-5
  • 電話 0547-35-2111(代表)

バクスターより

今年4月に発生した熊本県を中心とする地震は、各地に大きな被害をもたらしました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興をお祈りいたします。
今号のスマイルでは、巻頭特集にて、PD患者さんの災害対策をご紹介しております。このような災害が起こらないことを願いますが、今回の特集も参考にしていただき、万が一の場合に備えていただければ幸いです。

<災害にあたって:バクスターからのご案内とお願い>

「訪問看護」とはどのようなものかを教えてください

  • 安否確認

    震度5強以上の地震が発生した場合や、その他(台風、豪雨、噴火など)の理由にて、避難指示が発令された場合には、医療機関と連携を取り、対象地域の患者さんの安否確認を行います。

  • 緊急配送

    腹膜透析液・器材が不足する場合、ご使用の機器類が作動しない場合、ご自宅以外での治療が必要となる場合などは、おかかりの医療機関に確認の上で、緊急配送を行います。

バクスターからのお願い

  • 平常時におかかりの医療機関にご確認をお願いいたします

    災害時には、普段通りに治療を行えない場合もあります。いざという時に落ち着いて行動できますよう、日頃から、災害時の対応について、主治医や医療スタッフの方とご確認をお願いいたします。

  • 複数のご連絡先をお知らせください

    通信障害時や皆様が避難されている場合、ご自宅の電話番号ではご連絡が取れないことがあります。携帯電話番号や、メールアドレスなど、複数のご連絡先を、あらかじめバクスターカスタマーサービスの担当者までお知らせください。

  • 緊急配送が必要な場合、バクスターへご連絡ください

    いつものお届け先にいらっしゃらない、透析液や器材が足りなくなるなど、至急連絡を取る必要がある場合は、バクスターカスタマーサービスまでご連絡をお願いいたします。おかかりの医療機関に確認の上、ご指定の場所に緊急配送をいたします。

  • ご自宅の在庫について、主治医とご相談ください

    ライフラインの復旧に時間がかかることもあります。腹膜透析治療を継続するために、透析液や交換キット類について、1週間程度の余裕を持てるよう、主治医と在庫についてご相談をお願いいたします。

今回の熊本地震におきましては、対象地域にお住まいの260名を超える患者さんへ安否確認を行いました。震度5強以上の地震発生から1日以内には全ての患者さんの無事が確認され、深刻な影響なく無事透析液をお届けできたことをご報告申し上げます。(2016年4月20日現在) 患者さんの中には、ご自宅が被災しバッグ交換のために病院に通われた方や、停電の影響でAPDからCAPDに切り替えた方もいらっしゃいました。是非、この機会に、おかかりの医療機関と災害時の対応について、ご確認ください。

バクスターでは、皆様に安心して治療を継続していただくため、様々な場面に対応できるよう、今後も取り組みを進めてまいります。

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