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巻頭特集

2016年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

小児の腎臓病とPD治療について
—大事な成長期にできるだけ多くの経験を—

腹膜透析(PD)は大人だけでなく、小児の腎代替療法としても積極的に取り入れられています。小児の治療で大切な点は、成長・発達過程を考慮しながら行っていく必要があること。小児の腎臓病治療の現状やPDで心掛けることなどについてお聞きしました。

幡谷 浩史 先生

東京都立小児総合医療センター

幡谷 浩史 先生
総合診療科・腎臓内科 部長

将来を見据えたトータルな治療の一環として、PDがある

透析が必要な小児患者さんはどのくらいいるのでしょうか?
幡谷先生
2006年から2011年の6年間で調べられたデータによると、20歳未満の小児人口100万人あたり、毎年4人の割合で、透析や腎移植などの腎代替療法を新たに導入されています。透析導入年齢としては0~4歳が一番多く、次いで10~14歳、5~9歳と続きます。思春期近くに増えるのは、体が大きくなるにつれ、働いている部分に負担がかかり、さらに腎機能が低下するためだと言われています。
小児の腎代替療法の特徴について教えてください
幡谷先生
大人との大きな違いは、腹膜透析(PD)の選択が多いことです。体格が小さい小児では、血液透析(HD)で必要なシャントの作成が難しいことが多く、またシャントを作成できた場合も、HDでは週3回、病院で治療を受ける必要があり、通学など日常生活の制限が大きくなります。通常の生活ができて、同時に透析もしっかりとできるという点で、PDがより適しているのです。実際、0~4歳までは9割が、5~14歳でも55%がPDを選択しています。ただし、PDは治療期間が限られますので、その先の治療も考慮しながら行うことが重要です。また、小児では移植が多いのも特徴です。年齢が上がるにつれ、透析をしないで腎移植を行う「先行的腎移植」が増え、5歳以上では約3割が行っています。10~20年前はわずか数%でしたが、近年は環境が整えば先行的腎移植を行うケースが増えています。先行的腎移植が増えた背景としては、腎臓病治療の開始時から移植に向けた準備を行ってスムーズに移植できるようになってきたことや、腎移植を行う施設が増えたことなど医療環境の整備もあると思います。
移植が治療のゴールということになるのでしょうか?
幡谷先生
私は小児の腎不全治療では、いかに普通に近い生活を送ることができるかが大事だと考えています。その点で腎移植は健常な子とほぼ同様の生活を送ることが可能ですし、透析に伴う合併症や成長障害も避けられるため、メリットが大きい治療法と言えます。

ただ残念ながら、移植をした腎臓が一生涯持つという保障はありません。腎機能が低下すれば再び透析に戻るかもしれません。また、様々な事情で移植ができないこともあります。ですので、PD、HD、移植をどのタイミングでどう行うかというのをトータルで考えることが必要だと思っています。
成人のPD治療と小児のPD治療の違いは?
幡谷先生
まず、成人と比べてAPDの選択が多いことがあげられます。日中のバッグ交換をできるだけ減らすことで、ほかの子どもと同じような生活を送りやすくすることが主な目的です。また、小児の原疾患で4割を占める先天性腎尿路奇形(腎臓や膀胱、尿道などに生まれつき形態の異常があること)では、幼児期には多尿で健常な子より尿が多いこともあり、日中の水分コントロールは尿で行えるケースもよく見られます。尿量が維持されている場合は、水分や塩分の制限もそれほど神経質になる必要はなく、むしろ塩分が排出されすぎる傾向がある場合は塩分を摂ってもらうこともあります。一方で、赤ちゃんの頃から無尿という子もいますから、その子の病態に合わせて管理していく必要があります。

食事制限は、長期間行うことで成長に影響が出てしまうのと、小児では腎機能の保護に有効とのエビデンス(科学的根拠)も明確ではないので、厳しくは行いません。リンやカリウムが高い場合は調整しますが、成長に必要なエネルギーをしっかり摂ることが非常に大切です。また、子ども自身も皆と同じ食事を食べられないと食事が嫌になってしまいますから、学校などではできるだけ皆と同じ給食を食べ、牛乳だけはやめておく、家庭の食事でリンやカリウムを調節してもらうなどしています。

過保護になりすぎず、体力をつけて、できるだけ多くの体験をさせること

小児患者さんのご両親や周囲の方が知っておいたほうがいいことはありますか?
幡谷先生
お腹をぶつけないようにする、腹圧のかかる運動は避ける以外は、なるべく制限せず、いろいろな体験をさせてあげてください。日常生活をスムーズに送るためにも、周囲にはPD治療を行っていることをできるだけオープンにするよう勧めていますが、患者さんの性格もあるので難しいところです。友達に透析を知られたくないという子もいますし、学校で薬を飲むのが嫌だという子も中にはいます。学校行事にはできるだけ参加させたいと願うご両親が多いですが、一方で、子どもの鞄を持ってあげて一緒に登校するなど、過保護になってしまう方もいます。そうなると余計にほかの子と触れ合う機会が減り、本人の頑張ろうという気持ちも薄れてしまいます。お子さんの今の状態をきちんとコントロールすることも大切ですが、同時に、大人になってからしっかり生きていけるよう心の成長も考えてあげる必要があります。体力のある子の方がいろいろなデータが良いとの報告もあるので、過保護になりすぎず、可能な限りほかの子と同じようにさせてほしいですね。

出口部ケアについては、小さい子は汗をかきやすく不潔になりやすいので、清潔にはしっかり気を配るようにしてください。
小児のPD患者さんを持つご家族にアドバイスを
幡谷先生
健常な子どもであっても育てていくのは大変ですから、PDをしていたらなおさらです。腎不全の治療は長期間にわたって続くものですから、ご家族の不安や心配は尽きないと思います。特に、子どもの世話やPD治療を担うことの多いお母さんの中には、心身ともに疲れ切ってしまう方もいらっしゃいます。

家族の中で家事を分担するなど、治療がスムーズに行えるよう環境を整えてあげられると良いと思います。また、われわれ病院スタッフも家族をサポートする部門を設けるなど、チームで支える体制を作るようにしています。治療を行う上で困ったことや悩みごとがあれば、一人で考え込まず、医師や看護師に気軽に声を掛けてください。以前診ていた子が大人になって、「結婚しました」「看護師になりました」などと、報告に来てくれたり、ハガキをもらったりすることがありますが、本当に嬉しいものです。長い目で見ると今は大変な時期だと思いますが、子どもの将来を見据えながら、より良い治療を一緒に考えていきたいと思っています。
腎臓内科スタッフの皆さん 腎臓内科スタッフの皆さん

東京都立小児総合医療センター腎臓内科の取り組み

透析から移植までトータルな腎疾患治療を行っている同院では、新しい治療法などの臨床試験にも数多く参加して、患者さんの将来を見据えた治療を実践しています。PD外来は毎月第2木曜日に開設していて、小児のPD患者さんを持つご家族の情報交換や、横のつながりを持つ機会にもなっています。また、腎臓内科以外の関連各科との協力体制も整えられていて、疾患の治療以外にも合併症や成長障害など、子どもの発達に関わるサポートを行っています。腎移植前のカンファレンスには、腎臓内科のほかに移植科や麻酔科、ICUのスタッフに加え、精神科の医師や臨床心理士も参加して、総勢20~30人くらいになるそうです。同院は小児PD・HD研究会の事務局も行っています。同研究会は、疾患に関するデータの記録や「親と子のPDマニュアル」の改訂、年1回の研究会の開催を行い、毎年140~150名の医師や看護師が全国から参加し、小児の腎不全医療の発展に力を注いでいます。

病院データ

東京都立小児総合医療センター

東京都立小児総合医療センター

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