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巻頭特集

2019年スマイル秋号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

フレイルにならないために

加齢とともに運動機能や認知機能が低下し、虚弱になった状態を指す「フレイル」。健常から要介護に移行する中間の状態といわれていますが、早めに気付いて適切な支援を受けることで、健常な状態に戻る可能性があります。腎臓病や透析患者さんで多く見られるというフレイルについて、基礎知識や予防法をうかがいました。

左から横井さん、平松先生

JA愛知厚生連 江南厚生病院

平松 武幸 先生
透析センター長兼腎臓内科代表部長
横井 里奈 さん
薬剤部 腎臓病薬物療法認定薬剤師

フレイルの基礎知識

フレイルとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
平松先生
筋肉量が減って筋力が落ちている状態を「サルコペニア」といいますが、それに伴い虚弱体質のようになった状態を「フレイル」といいます。

フレイルには、3つの側面があります。1つ目は筋力が落ちることにより転倒しやすくなったり活動性が低下するといった肉体的な問題、2つ目は閉じこもりがちになり社会との交流が減少するなどの社会的問題、3つ目は認知機能の低下や抑うつなどの精神的な問題です。フレイルの状態が続くと合併症や生命予後にも影響を及ぼしますので、早めに予防・対策をすることが重要です。

なおフレイルという状態は、基本的に運動や食習慣の改善によって、健常な状態に「戻りうる段階」であるということも、ぜひ理解しておいてください。
なぜフレイルになってしまうのでしょうか。
平松先生
透析患者さんの場合、一般的にリンやカリウム、塩分やたんぱく質に関する食事制限がされています。その中でも、たんぱく質は筋肉の材料となる栄養素ですから、不足すると筋力が低下し、サルコペニアからフレイルに至るということが考えられます。

加えて、血液透析(HD)の方では、透析終了後に強い疲労感が現れて、歩行数などの運動量が減りがちとなります。実は腹膜透析(PD)の方も含めて、透析患者さんは一般の人に比べて運動量が少ない傾向にあります。

このように、透析患者さんは筋肉をつくる材料となるたんぱく質の摂取量が少なく、たんぱく質を合成して筋肉をつくるための運動量も少ないことから、フレイルになるリスクが一般の人より高いのです。

自己チェックの方法について

フレイルと判断する基準を教えてください。
平松先生
いまのところ統一された評価基準はありませんが、「6カ月で2~3kg以上の体重減少」「握力:男性26kg未満、女性18kg未満」「ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする」「通常歩行速度が1.0m/秒未満」などの指標が用いられています。
患者さんが自分でできるチェック法はありますか。
平松先生
患者さんが自分でチェックする場合には、歩く速さで判断するのが最も分かりやすいでしょう。具体的には、「歩行者用信号機の青が点灯している間に横断歩道を渡り切れるか」。信号が赤に変わっても渡り切れない場合、かなり歩行速度が落ちていて、フレイルのリスクが高い状態であると疑われます。

また、「ペットボトルの栓を自分で開けられるか」「濡れた雑巾をしっかりと絞ることができるか」といった項目も、日常生活の中で筋力が低下しているかどうかをチェックするための簡単な方法です。

もう1つ、重要なチェック法が体重の増減です。数カ月以内に体重が2~3kg減っているようであれば、フレイルに注意が必要だといえるでしょう。

フレイルにならないための予防法

患者さんが自分でできる予防法や注意すべき生活習慣などを教えてください。
平松先生
まずは生活のリズムを整えて、3食きちんと食べることが一番大切です。特に、高齢の方は食事制限を気にするあまり栄養が不足しがちですので、しっかり食べることを心がけてください。また、PD患者さんは、比較的外出の機会や日常生活での自立度も高いでしょうから、毎日の生活の中できっかけを見つけて、できるだけ体を動かすようにしましょう。
横井さん
透析患者さんにはたくさんのお薬が出ていると思いますが、服薬の観点からも食習慣を整えるのは重要です。朝昼晩の3食ではなく、朝昼兼用の食事と夕食など、1日2食が習慣になっている方もいますが、その場合はお薬の飲み方が変わってきますから、主治医や看護師、薬剤師などに相談してください。また、筋力が弱っている方では、その他の自己管理力も落ちてきているケースが多く見られますので、ご家族の方も気を付けていただくとよいですね。
日常生活では、どのくらいの頻度で、どのような運動を行えばよいのでしょうか。
平松先生
原則として、運動は毎日行った方がよいでしょう。運動が生活の一部になり、より長続きするのではないかと思いますので、毎日できる範囲で運動を続けてみましょう。ウォーキングもよい運動ですが、可能であれば坂道や階段をウォーキングコースに取り入れると、有酸素運動とともに筋力強化にもつながります。
足腰が弱り、なかなか外出ができない方でも部屋の中でできることはありますか。
平松先生
手すりや机、椅子の背もたれなど、何かにつかまりながら行うスクワットが簡単でお勧めです。回数は無理のない範囲で構いませんので、毎日少しずつ続けるとよいでしょう。あるいは、100円ショップなどで売っているゴムチューブを使った筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)も、屋内で簡単にできます。
体調不良にならないかが不安で、運動ができない方へのアドバイスをお願いします。
平松先生
基本的には、運動をした方が心臓や肺の機能もよくなりますので、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながると考えられます。それでも、運動をすることに不安があるなら、最初はデイサービスなどに行き、運動やリハビリの専門家、看護師などの指導や協力を受けた上で、自宅で運動をしてみるとよいでしょう。あるいは、誰かと一緒に体を動かしてみるのも、1つの方法です。
運動をする際、カテーテルや出口部に関して、気を付けた方がよいことはありますか。また、お腹に透析液が入っていても運動はできますか。
平松先生
出口部は、まずしっかりと固定して、汗をかいたらシャワーなどできれいに洗いましょう。

また、翌日に疲れが残るような激しい運動は避けた方がよいですが、普通の運動であれば、透析液が入っている状態でもどんどん行ってください。あまり激しい運動を行うと、場合によっては鼠径ヘルニアなどが悪化することがありますが、ウォーキングやスクワットなどの運動であれば、そのような状態に至ることはなく、出口部の固定も普段通りで問題ないでしょう。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。
平松先生
PDは、自宅に閉じこもる治療ではなく、社会に出て行くことができる治療です。社会性の高い特徴を生かして、どんどん運動をし、外出や旅行もして、社会の輪の中に入っていっていただきたいですね。それが結果として、フレイルの予防にもつながります。
横井さん
私自身も運動があまり好きではありませんので、おっくうに感じる患者さんのお気持ちはよく分かります。例えば、天気が良いから外の景色を見に行くといった感じで、ちょっとした運動を日常生活に組み込めたらよいと思います。
腎臓内科スタッフの皆さん 腎臓内科スタッフの皆さん

JA愛知厚生連 江南厚生病院の取り組み

腎臓内科では腎疾患全般に対して幅広く診療を行い、できるだけ透析治療に至らないよう、さまざまな原疾患に応じた治療を心がけています。透析や腎移植が必要となった方には、PD、HD、移植に関する十分な情報提供に取り組んでいます。

また、日本腎臓病薬物療法学会の認定薬剤師が教育入院時から関わり、医師と相談して患者さんの生活習慣に合わせた薬剤の調整や保存期と透析導入後で変わる内服薬の説明を行ったり、PD導入時には看護師が患者さんの自宅を訪問し、退院前後の指導や調整を行うなど、多職種によるチームで患者さんをサポートしています。「今後、地域の訪問看護ステーションとの連携を強化して継続的に訪問支援ができる仕組みをつくるなど、近年増えている高齢患者さんへの対応をより充実させていきたいと考えています」(平松先生)。

病院データ

JA愛知厚生連 江南厚生病院

JA愛知厚生連 江南厚生病院

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