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巻頭特集

2019年スマイル春号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

検査について理解を深めよう

腹膜透析(PD)患者さんは、定期的にさまざまな検査を受けていますが、その意義や結果の見方について、分かりづらいと感じている方も多いと考えられます。患者さんの状態を把握し、より良い療養生活を送るために欠かせない検査。治療をより主体的に捉え、積極的な自己管理の促進につなげられるよう、今回の特集では検査について取り上げます。

武田 朝美 先生

久留米大学医学部
内科学講座腎臓内科学部門

森山 智文 先生
 
伊藤 佐久耶 先生
 
黒川 佑佳 先生
 
児玉 豪 先生
 

検査項目について

PD患者さんが受けている検査には
どのような項目がありますか。
森山先生
患者さんは定期的にさまざまな種類の検査を受けていると思いますが、当院では1ヵ月に1回の定期受診時に、血液検査、胸部と腹部のレントゲン(X線)検査と栄養指導時に体組成を測定するインボディ(InBody®)を行い、6ヵ月に1回は入院で、PET(腹膜平衡試験)と蓄尿、蓄排液検査を行っています。さらに年に1回、誕生月に腹部と胸部のCT、心エコー(心臓超音波)、心電図、ABI(下肢の動脈の詰まりの有無や程度を調べる検査)、消化器内視鏡検査を実施しています。
黒川先生
水分量の指標として胸部のレントゲンを撮影し、腹部のレントゲンではカテーテルに問題がないかを確認しています。
伊藤先生
血液検査では、肝機能、栄養状態〔アルブミン(alb)〕、腎機能〔尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)〕、コレステロール、炎症反応、電解質〔ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(Ca)、リン(P)ほか〕、貧血などについて確認しています。このうち、PD患者さんに特に気を付けて見てほしいのは、尿素窒素、カリウム、リン、貧血の4項目です。
なぜ多くの検査が必要なのでしょうか。
森山先生
同じ検査を定期的に行って結果の数値を比べることで、患者さんの健康状態を時系列で把握できます。経時的に見ることで1人1人の傾向が分かりますし、早期に異常を発見できるのです。

検査から分かること

透析の状態や残存腎機能の状態が分かる
検査はありますか。
黒川先生
腎機能の変化が分かる検査として、クレアチニン、尿素窒素があります。患者さんから「なぜ透析を導入した後もクレアチニンや尿素窒素を検査するのか」と聞かれることがありますが、検査値の変化をチェックして毒素がたまっていないか、筋肉量が減っていないかなどを判断するためです。
児玉先生
尿量が減少してきたと同時に尿素窒素やカリウム・リンの値が上昇した場合は、残存腎機能が低下している1つの目安になります。しかしながら、残存腎機能の低下だけが原因とは限りませんので、問診で食事や生活習慣などについて伺い、総合的に判断します。
森山先生
体液管理がうまくできていないと残存腎機能は低下してしまいますので、水分の管理は重要です。PD患者さんはご自宅で毎日、体重、血圧、尿量、PDでの除水量を測っていますので、普段と異なる結果が出た場合は生活習慣を見直してみてください。
食事管理がうまくいっていることが分かる
検査項目を教えてください。
伊藤先生
患者さんに注目して見てもらいたいのはカリウムとリン、そして塩分摂取について分かる項目です。
塩分に関しては、血圧、下肢の浮腫(むくみ)、インボディの体液量、胸部レントゲン、体重の5項目で分かります。塩分摂取の状態がわかりやすいのは体重です。体重が増えたということは、基本的にはむくんだと考えてください。塩分の摂り過ぎでむくんだ場合は、摂取量を減らせば体重が減少するはずです。
森山先生
気を付けていただきたいのは、体重が増加したからといって自己判断で食事を減らしたりすると、必要な栄養素を摂取できなくなってしまうことです。栄養指導でも説明されていると思いますが、しっかりと栄養を摂ることが大事です。
腹膜の状態が分かる検査について
教えてください。
伊藤先生
腹膜の機能を調べる検査にはPETがあります。腹膜の性質は患者さんごとに個人差があります。そのため、PD導入時にはまず患者さんの腹膜の性質を調べて処方を決定します。その後、定期的に検査を行うことで腹膜の機能低下がないかなどの変化を確認します。腹膜機能が低下すると、バッグ交換の回数を増やす、透析液を変更するといった処方の変更、血液透析(HD)の併用や移行が必要となりますので、当院では早期発見のためにも半年に1回PETを実施しています。また、腹膜炎は腹膜の機能低下につながりますので、腹膜を守る上で感染症を起こさないことも大切です。
年に1回行う検査は
どのような目的で行われるのですか。
児玉先生
透析患者さんは、定期的に通院しているため、定期健康診断を受けない方もいますので、年に1回は全身の状態を確認する検査を行っています。透析患者さんに多いといわれる腎臓がんの早期発見のために、腹部CTを撮影しています。
伊藤先生
腎不全患者さんは一般の人と比べ、心血管疾患のリスクが高いとされています。心機能を評価するために心電図や心エコー、胸部レントゲンを、末梢血管を評価するためにABIを行い、早期発見に努めています。

検査結果の活用について

検査結果を患者さんが活用するための
アドバイスをお願いします。
伊藤先生
検査結果は毎回、患者さんにお渡ししています。まずは興味を持って見るようにしてください。検査項目とその数値が示す意味を理解することが重要です。
森山先生
検査結果などで分からないことがあれば、遠慮なく医師にお尋ねください。何回ご質問いただいても構いません。頑張っている様子が伝わってきて、質問されるとうれしい気持ちになります。検査結果を生活改善、ひいてはPDの長期間継続のために活用していただければと思います。
児玉先生
健康状態が良くなると検査の数値に反映されます。数値が良くなった患者さんには「頑張りましたね。良くなっていますよ」と必ずお伝えしています。検査結果を前向きに受け止めていただきたいです。
黒川先生
大きな変化があったり、変動が続くような項目には気を付けてください。カリウムが急上昇する、あるいは貧血が急速に進行するなどは緊急度が高い項目で、急を要する場合があります。一方、尿素窒素やリンは、継続的に徐々に上昇していたら要注意です。
PD患者さんへのメッセージを
お聞かせください。
伊藤先生
PDは今までの生活に近いスタイルのまま、在宅でできる治療ですので、できるだけ長く継続していただきたいです。快適な生活を送るためには、定期的な検査や自己管理が大切です。毎回の検査結果を参考にして、元気で過ごしてください。
児玉先生
検査結果が治療へのモチベーションにつながればうれしいです。ただ、結果にとらわれ過ぎて、栄養が足りなくなるような食事制限をしてしまわないよう、気を付けてください。
森山先生
医師は検査の数値だけを見ていると思われがちですが、問診や在宅での様子などを含めて、患者さんの状況をしっかり受け止めて診療しています。検査の結果は、現在の状況が把握できる数値というだけでなく、1ヵ月後の外来診療までにこの数値を改善しようという目標のための数値にもなります。近い目標、直近のモチベーションとしていただきたいです。
黒川先生
検査だけでなく治療についても、マイナスと捉えずプラスとして考えてもらいたいです。
深水圭主任教授(前列中央)と腎臓内科スタッフの皆さん 深水圭主任教授(前列中央)と腎臓内科スタッフの皆さん

久留米大学病院腎臓内科の取り組み

久留米大学病院腎臓内科では、患者さんが最適な腎代替療法を選択できるよう丁寧な療法説明を行い、PD、血液透析(HD)療法を希望する場合は同院で治療を施行し、移植を希望する方には移植ができる施設を紹介しています。PDに関しては、導入時に訪問看護師が全ての患者さんの自宅を訪問することで家庭環境の把握に努め、訪問看護師と医師・病院看護師・ソーシャルワーカーが連携し、順調にPD生活がスタートできるよう支援しています。また、定期PD外来時に栄養指導を取り入れ、検査入院時には出口部ケアやバッグ交換手技の見直しを行うなど、患者さんが良好にPD治療を継続できるよう、さまざまな取り組みを実践しています。さらに、近隣の病院や地域包括センターとの連携を進め、患者さんが筑後エリアのどこでも安心してPD治療を受けられる環境整備にも力を注いでいます。

病院データ

名古屋第二赤十字病院

久留米大学病院

  • 〒830-0011
  • 福岡県久留米市旭町67番地
  • 電話 0942-35-3311(代表)
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