1. 腹膜透析(PD)情報サイト トップ
  2. 快適な腹膜透析(PD)ライフのための情報誌「スマイル」
  3. 患者の達人
  4. PDが支える四万十での暮らし

患者の達人

2012年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

PDが支える四万十での暮らし

患者の達人

松下 清幸さん(75歳)

PD歴:1年、旅館経営
高知高須病院

高知県四万十市で旅館を経営している松下清幸さん。
大自然に囲まれながら毎日を送っています。

病院から遠く離れた場所では自宅でできるPDが便利

「昔は透明度が水深15メートルありましたから、それと比べたらずいぶん濁ったほうですよ」と話す松下清幸さん。その視線の先にあるのは、"日本最後の清流"と謳われる高知県の四万十川です。松下さんは、豊かな水をたたえてとうとうと流れるこの川の畔で、温泉旅館を営んでいます。旅館の外はすぐに川、まさに絶景です。この土地で生まれ育ち、一時は大阪にも働きに出たことがある松下さんでしたが、やはり故郷が一番だと帰郷。15年程前に何と温泉の採掘に成功し、この旅館を開業しました。

そんな松下さんの腎臓に異変が起きたのは、今から3年前のこと。「もともと糖尿病を患っていたのですが、隣県の病院まで行って診てもらったところ、『半年しかもたない』と言われるほど腎臓の状態が悪化していました」と当時を振り返ります。すぐに食事制限を始め、大好きだったお酒もやめて、薬での治療をしばらく続けたそうです。

しかし、病状はよくならず、今から1年前、現在かかっている病院で透析導入を薦められました。「血液透析(HD)だと1回に何時間もかかると聞きました。ここ(自宅)から病院までは100km以上、車で2時間程かかり、それでは通いきれず旅館の仕事ができない、と先生に尋ねたところ、腹膜透析(PD)なら自宅でできると教えてもらい、PDをすることにしました。夜間、寝ている間に透析するAPDのような器械は使ったことがなかったので、操作を覚えるのに時間がかかりましたが、仕事ができるのは助かっています」。

透析生活で気づいた野菜のおいしさ

松下さんが経営する旅館「十和温泉」 松下さんが経営する旅館「十和温泉」

今、松下さんの一日は畑仕事が中心になっています。毎朝6時に起床してAPDを終了後、宿泊客に出す朝食の準備。血圧の数値が高くなければ8時から10時くらいまで畑に出かけ、野菜づくりに精を出します。以前に比べると疲れやすくなったとおっしゃる松下さん、無理をしないように休憩を挟みながら、昼過ぎに排液をして、午後は2時から4時頃まで再び畑へ。それが終わるとお客様に出す夕食の準備に取り掛かります。松下さんは調理師免許を持つ板前でもあるのです。そして夜はAPDの準備に入ります。「食事の準備は、団体客や大勢の宴会がある時は近所に住む息子が来てくれますが、少人数の時は自分だけで。畑仕事も家内が手伝ってくれることもありますが、一人でやることが多いので忙しいですね。1日があっという間に終わってしまいます」と笑顔がこぼれます。その笑顔のわけは、畑の野菜たち。今、松下さんが何より楽しみにしているのが、野菜の成長です。野菜づくりを始めたのは3~4年前から。「まったくの素人でしたが、誰に教わるというわけでもなく、見よう見まねで始めました。1日1日とぐんぐん大きくなっていくのを見るのは本当に楽しみ。そして、無農薬で育てた野菜は、市場で売っているものに比べると、甘さがあって本当においしいですよ」。昔は肉や魚しか好まなかったそうですが、「PDをするようになってよかったのは、野菜のおいしさがわかったことかな」と野菜の話になると本当にうれしそうです。

旅館のお客様にも、自家製の野菜は大評判。季節の野菜を煮たり焼いたり…、さらに、夕食には四万十川名物のうなぎや息子さんが獲ってくる鮎などが供されます。「夏だったら、なすやかぼちゃ、トマト…。自分でつくるのが一番、野菜づくりはもう趣味のようになっていますよ」と、笑う松下さん。四万十の自然とおいしい野菜で、これからも宿泊客を癒してくださることでしょう。

病院スタッフからのメッセージ

医療法人 尚腎会 高知高須病院 外科 池辺 宗三人 先生

私は2008年の夏に家族で四万十川へキャンプに行ったとき、偶然にも松下さんの旅館を訪れたことがあります。とても自然豊かなすばらしいところで、温泉でキャンプの疲れが癒されたことを覚えています。PDを導入して約一年、ご本人は必ずしもPDに適している性格とは言えないかもしれませんが、奥様の献身的な介助もあって成り立っています。今後も、素晴らしい四万十の自然の中でできるだけ長く過ごしていただけるよう皆で支えていきたいと思っています。

ページトップ