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患者の達人

2013年スマイル秋号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

歌と陶芸、家庭菜園を、楽しみ・味わう。
生活優先のためのPD

患者の達人

吉岡 聰さん(80 歳)

PD歴:2年3ヵ月
神戸掖済会病院 腎臓内科

退職後、本格的に始めた陶芸、そして歌(合唱)。長年、続けている家庭菜園。忙しくも楽しく充実した吉岡 聰さんの日々は、「PDなしでは考えられない」とのことです。

主治医の近藤天韻先生(前列右)はじめ、スタッフの皆さんと

日本を代表する聖歌隊のテノールとして

心地よい風がふんわりと吹き抜ける、吉岡家のリビングルーム。テーブルの上には自作の食器が並び、窓の外は緑したたる家庭菜園。取材時は、トマト、なす、きゅうり、ゴーヤ、唐辛子などがすくすく育っていました。中2階は夫婦の趣味である陶芸工房。何と本格的なガス窯が備えつけられています。そして、自室のパソコンには歌の譜面が。「大学時代はグリークラブの指揮者をしていましたが、やはりよい音楽の素晴らしさを忘れられなかったのですね。65歳での退職後、数十年ぶりに歌を再開しました」。

2010年と今年の2回、日本を代表する聖歌隊である東海メールクワイアー・高田典礼聖歌男声合唱団のテノールとして、バチカンでのコンサートツアーに参加。PD導入後初参加で奥様も同行された今年5月のツアーでは全3回のミサとコンサートに臨み、スタンディングオベーションを受けたり、枢機卿(ローマ法王に次ぐ高位聖職者)が出席するミサではジュリア聖歌隊(サンピエトロ大聖堂所属の聖歌隊)と1小節ずつ掛け合いでグレゴリオ聖歌を歌うなど、「自分なりに練習をし、満足のいく演奏ができました。バチカンの音楽ではトップであるポール神父の指揮で歌えたことも感激でした」と吉岡さんは充実した時間を振り返ります。

"未来の時間に目を向けて"

このツアー参加のために、自宅のある神戸から名古屋での月1回の練習に参加。そのほかにもいくつかの合唱団の練習や陶芸クラブの講師など、外出も多く多忙な毎日です。「ですから、PDじゃないと間に合わないんです(笑)。当時の主治医の先生から『吉岡さんは忙しいから2日に1回も病院に通えないでしょ? PDがいいのでは?』と言われて初めてPDを知りました」と吉岡さん。10年程前に大腸検査に行ったところ、糖尿病がわかり、入院。ヘモグロビンA1cは5.8とほぼ正常値になったものの、血圧がなかなか下がらず、数年して腎臓内科を紹介され、約2年前に透析導入となりました。

普段は就寝中に行うAPDです。夜9時にスタートして朝5時に終了。後片付けをして、5時半頃にパソコンに向かい、6時過ぎから菜園を見て回ります。7時半に朝食。その後は自室で歌の練習を始めるか、あるいは窯場(工房)に入ってろくろをひいたり。週に3回は前述の外出が入ります。また、窯に火が入ると、30時間はつきっきりで温度調節が必要なのでどうしても徹夜に。旅行の際や徹夜の時にはツインバッグに変更します。「たまの徹夜と旅行の際にもPDは融通が利くので助かっています」。

夫婦ともに食べたり飲んだりが大好き。しかし、導入前後からは塩分を減らすのはもちろんのこと、野菜中心にシフト。家庭菜園がますます欠かせなくなりました。妻の節子さん(70歳)は、「今も食事の時間は大切にしています。ただ、ノンアルコールになりましたね。自家製の唐辛子も塩分を抑えるのに大活躍しています(笑)」と食事の内容に気を配り、ご主人の毎日の治療を「よく頑張っていると思いますよ」とねぎらいます。


最後に、同じPD 患者さんである読者の皆さんへのメッセージとして吉岡さんは、「"生活優先" のためのPDです。いつも前向きに。そうしないと病気に勝てません。過去を振り返るより "未来の時間に目を向けること" が大切だと思います。明日は何をしよう、来年は? 次は何を歌おうと思いながら過ごしています!」と力強い言葉で締めくくってくださいました。

「食事はすべて妻に任せています」。庭の菜園で 「食事はすべて妻に任せています」。庭の菜園で
病院スタッフからのメッセージ

神戸掖済会病院 腎臓内科医長 近藤 天韻 先生

吉岡さんからバチカンでのコンサートで歌いたいと伺った時には驚きましたが、PDを選択され、趣味を続けて前向きな人生を送って頂きたいと思っていますので、無事にバチカンのサンピエトロ大聖堂で歌ってこられたことは、ご本人にとっても自信につながる経験だったのではないでしょうか。旅行中の治療は、事前に相談を受け調整できたので、帰国後の検査でも大きな問題はありませんでした。陶芸で時々徹夜したり、各地へ出かけたりとお忙しいようですので、体調管理には気をつけながら、これからも趣味を存分に楽しんで頂きたいと思います。

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