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患者の達人

2013年スマイル春号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

りんご作りを続けるために、
好きに動けるPDを

患者の達人

松田 信弥さん (61歳)

PD歴:7 ヵ月、農業
信州大学医学部附属病院 腎臓内科

北アルプスの名峰・常念岳を間近に望む信州・安曇野で、りんご農家を営む松田信弥さん。1年中多忙な農作業を、「PDならこれまでと同じようにできるのでは?」と選択しました。

所属する研究会のトレードマークを指さす主治医の竹前先生(左)、松田さん、腎臓内科の橋本幸始先生

食生活は一変、農作業はこれまで通り

りんご農家の1年は、正月2日の剪定から始まります。これは3月までかかり、4月は花摘み、5月から7月にかけては摘果と続き、8月になると、早くも「つがる」の収穫、9月は別に作っている和梨、10月・11月は「シナノスイート」「サンふじ」などの収穫で多忙を極めます。少しゆっくりできるのは12月だけという1年を、松田さんは過ごしてきました。

最初に腎臓について指摘されたのは、30年以上前、当時勤務していた会社の健康診断でした。以後、信州大学医学部附属病院に通院し、薬も服用していましたが、自覚症状がないこともあり、食事は好きなものを好きなだけ、お酒もタバコも……という生活。徐々にクレアチニンの数値は上がっていき、昨年、医師から透析を勧められたのです。

「いとこが糖尿病から血液透析(HD)になり、動けなくなったのを見ていたので、『絶対イヤだ』と思っていました。でも、『透析をしなければ、命の危険もありますよ』と言われ、覚悟を決めかけていたところに、現在の主治医である竹前先生から、『自宅でできる腹膜透析(PD)という方法もあります』と教えてもらい、HDとの違い、メリットデメリットなどの話を聞きました。家族で話し合い、最後は私自身で『これまでと同じように体が動き、農業を続けられるなら、PDをやってみよう』と決断しました」。

昨年8月のPD導入をきっかけに、松田さんの生活は一変。お酒もタバコもきっぱりやめ、病院の栄養教室に参加した奥様の奈保子さんが作る、食塩、エネルギー、リンなどに配慮した食事を摂るようになりました。PD導入がよいきっかけになり、服用する薬もコレステロール降下剤のみとなったのもうれしいことでした。一方、農作業はこれまでと変わらずに続けることができました。

PDで乗り越えた収穫作業

松田さんの1日のスケジュールは、朝5時半頃に排液し、朝食後、りんご畑へ。昼食後の午後1時に透析液を入れ、再度畑へ。帰宅して夕食、午後7時にバッグ交換、12時に透析液を入れて就寝、となっています。PDを始めて「体がラクになった」と松田さん。こうして導入後、忙しい収穫作業を乗り越えることができました。その傍らで一緒に農作業をする奥様の奈保子さんは「無理をすると、排液にもやもやしたもの(フィブリン)が出ますから、なるべく無理をしないように、と思っています」と、常にご主人の体調を気遣っています。

松田さんの仕事は農作業だけではありません。農協のりんご部会や地域の組合の班長、さらに暑い時期にはりんご畑に撒くスプリンクラーの管理をする散水員として、地域のために活躍しています。「あと20年は生きたい、と思います。正直なことを言えば、お腹のカテーテルを少し邪魔に思うこともありますが、今まで通りに動けるのですから仕方がないですね。これから透析導入を考える人には、『自分次第。自分で決めることが大事。PDは、やってみたらラクですよ』と言いたいです」。今後についてうかがうと、「趣味といえる趣味がないので、これから何か始めたいと思っています」と話してくださいました。そんな松田さんとりんご畑を常念岳が優しく見守り、今年のりんごもきっとたわわに実ることでしょう。

病院スタッフからのメッセージ

信州大学医学部附属病院 腎臓内科医師 竹前 宏昭 先生

松田さんのお仕事がりんご農家と聞き、時間の融通が利くPDという選択肢もあるのでは、と考え、PD・HD・移植という3つの治療法をじっくり説明させてもらいました。PDなら、りんごの味見もできますから(笑)。導入後、一番驚いたのは食生活の改善と禁煙で、内服のお薬が1つだけになったことです。今は、"優等生"の患者さんですね。PDを長く続けられるよう、もちろんしっかりサポートしていきますが、いずれはHDを一度も経験せずに移植、という人生もあるのではないかと思います。当院では、すべての治療法ができますので、ぜひ松田さんはじめ、近隣の患者さんにもこのことを知っておいていただきたいといます。

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