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患者の達人

2018年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

体が動く間は好きな料理をつくりたい 居酒屋を続けるためにAPDを選択

患者の達人

桑原 務さん(70歳代)

PD歴:4ヵ月、居酒屋経営
新潟大学地域医療教育センター
魚沼基幹病院

若いころから仕事で国内外を飛び回り、地域の自治会の仕事にも積極的に参加するなど、活動的な桑原務さん。現在も腹膜透析(PD)治療を行いながら居酒屋を経営し、仕事と治療を両立されています。桑原さんのPDライフをお聞きしました。

インフルエンザで病院を受診したときに末期腎不全が発覚

桑原さんは、割烹料理の板前からリゾートホテル系列の統括総料理長となり、新規ホテルや和食レストランの立ち上げに携わってきました。その数は国内38カ所、海外27カ所に上るといいます。また、公邸料理人の手伝いを依頼され、2,000人もの参加者が集うパーティで料理を提供したこともあります。その後、地元湯沢のホテル勤務を経て、ご自身で居酒屋を始めました。

今年2月、高熱が出た桑原さんはインフルエンザなら居酒屋を休まなければと、普段とは違う病院を受診しました。すると、腎臓に問題があることが分かり、魚沼基幹病院に紹介されたところ、末期腎不全で透析が必要と診断されたのです。「糖尿病で食事療法を実践していたのですが、腎臓については何も言われたことがありませんでした。突然、透析が必要だと言われて『もうお終いだ』と思いました。女房は私が死んでしまうのではないかとひどく心配していました」。

しかし、主治医の飯野先生が「大丈夫ですよ」と深刻にならず重苦しくならないように話してくださったことで、桑原さんは「気持ちが少し楽になった」と笑います。ただ、血液透析(HD)は1日置きに病院に通わないといけないため、HDしか知らなかった桑原さんはもう料理の仕事はできないと諦めていました。というのも、HDをしていた板前の同僚が、1日置きの通院と仕事が両立できず、退職せざるをえなくなったからです。しかし、自宅で治療ができるPDについて説明してもらい、さらに寝ている間に機械で行えるAPDがあることを知り、「好きな料理の仕事を続けたい」と、APDの選択を即決しました。

スタッフの皆さんと前列右が桑原さん、左が奥様 後列左から3人目が飯野先生 スタッフの皆さんと
前列右が桑原さん、左が奥様
後列左から3人目が飯野先生

PD治療を行いながら 年中無休の居酒屋を経営

5月に入院し、カテーテル挿入の手術を受けた桑原さんは、APDの操作をいち早くマスターし、導入の翌日から1人でできるようになりました。「画面に指示が出るからその通りにすればいいし、難しいことはなかったよ。順序よく丁寧に行うことがコツだね」。

退院後、すぐに仕事に復帰した桑原さん。午前11時から午後11時まで年中無休で営業する居酒屋には、地元の高齢者が毎日のように集まり、カウンターに立つ桑原さんとおしゃべりをしたり、カラオケを歌ったり、お酒を飲みながらの交流を楽しんでいます。桑原さんがつくる料理は好評で、お客様から家族の夕食を注文されたり、ときには近くのお店から料理をつくってほしいと頼まれたりすることも。お店には地元の人だけでなく、スキー客や外国人観光客も数多く訪れるそうです。

「夜はPDをしなければいけないから、前より品行方正になったよ」と笑顔で話す桑原さん。お店が終わってすぐにPDを始められるように、仕事の合間に自室へ戻って機械をセットしておくという工夫もしています。

体調が回復してだるさもなくなった桑原さんは、愛犬の柴犬と一緒に毎日2回の散歩、ゴルフの練習も続けています。今後は奥様と一緒に旅行やドライブにも行きたいと話す桑原さんですが、「楽しみにしてくれているお客さんもいるから、体が動くうちは居酒屋を続けていこうと思っているよ。みんなの顔を見ていると俺も楽しいしね」と、大好きな料理人のお仕事優先の日々がまだまだ続きそうです。

ドクターからのメッセージ

新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院
腎臓内科 教授 飯野 則昭 先生

魚沼基幹病院は、新潟県魚沼地域において腎疾患患者に対し、保存期から透析導入・維持、重症例までの診療を行う病院としての役割を担っています。湯沢町にお住まいの桑原さんは、生活圏に血液透析が可能な施設がなく(最寄りの施設まで30km)、仕事を続けながら血液浄化療法を受けるために、PDを選びました。APDでの治療が軌道に乗ると、生活の変化は最小限にとどまり、治療と仕事を両立されています。何よりもうれしいのは、奥様ともども笑顔で外来を受診してくださることです。透析は人生の墓場と捉える方もいますが、始めれば必ず楽しみができます。そのことをあらためて実感させていただけた桑原さんとの出会いに感謝したいと思います。

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