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患者の達人

2019年スマイル秋号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

クジラの歯やシカの角を使ってアクセサリーづくりをするのが生き甲斐

患者の達人

安部 勝四郎さん(77歳)

PD歴:9ヵ月
医療法人社団 仙石病院

牡鹿半島はその名の通り、シカが生息する自然豊かな土地。東日本大震災の影響で海に出られない時期、漁師の奥さんたちのためにシカの角を使ったアクセサリーの制作を企画・指導した安部勝四郎さん。アクセサリーづくりへの情熱と腹膜透析(PD)ライフについてお聞きしました。

「まだ『本当の病人』にはなりたくない」

安部さんが初めて腎臓病と指摘されたのは2年前の夏。体調を崩して高血圧の治療に通っていた病院で検査を受け、腎機能の数値が悪いことを指摘されました。仙石病院を紹介されて受診したところ、すぐに「腎臓の状態が悪化していて、もう限界です。透析をしなければいけません」と告げられました。

スタッフの皆さんと。前列左から3人目が看護師の佐々木さん、4人目が安部さん、5人目が室谷先生 スタッフの皆さんと
前列左から3人目が看護師の佐々木さん、4人目が安部さん、5人目が室谷先生

血液透析(HD)を行っている親戚や知人がいたため、HDのことは知っていた安部さん。片道1時間かかる病院へ2日に1度通うのは大変だと思っていました。「透析と言われたときは大変なことになったと思いましたが、しょうがないと諦めました。ですが、病院でPDの説明を受け、家で、しかも寝ている間に機械でできるAPDであれば昼間は普段通りに生活できると考え、すぐに決めました。これなら動ける、本当の病人にはまだなりたくないと思って」。

APDの操作は画面の説明通りに行えば難しいことはなく、順調に覚えることができました。それまでは朝起きるのがだるくてつらかったことが嘘のように、顔色が良くなり、時間になるとぱっと目覚め、さっと起き上がることができるようになりました。実は『手術』がどうしても嫌で、カテーテルを埋め込む手術をかなりためらった安部さんですが、「こんなに簡単だったらもっと早くやればよかった」と笑って当時を振り返ります。

安部さんのPDライフは少し変則的です。APDを夕方6時に始めて夜中の2時半に終え、片付けと翌朝の準備をした後、朝6時までまた3時間ほど眠るという生活。「いろいろ試してみて、治療が終わってから3時間、安心感もあってぐっすり眠れることに気付いたんです。体の調子も良くて、自分にはこのやり方が合ってると思います」と話します。

牡鹿半島で取れるシカの角を使ったアクセサリーをデザイン

若いころは捕鯨船に乗り、南氷洋や北洋でクジラを捕っていた安部さん。手先が器用なことから、航海中に船内でクジラの骨や歯を加工して、パイプやキーホルダー、一輪挿しなどの工芸品をつくる仕事も担当していました。その後、地元牡鹿半島で手に入るシカの角で同じように作品をつくることを思いつき、アクセサリーなどのデザインの考案から制作まで行うようになりました(写真)。

アクセサリー


そして、東日本大震災の後、漁が行えない時期に、地元漁師の奥さんたちにアクセサリーづくりの手仕事の指導ができる人を探しているとの話があり、安部さんが指導に当たりました。また、観光協会からの依頼を受け、お土産品として販売するなど、安部さんの作品は地域振興にも貢献しています。

数年前に仕事は引退しましたが、現在も午前中は漁師・養殖業を営む娘さん家族を手伝い、タコを捕る籠や漁に使う網類の点検・修理の仕事をしています。「何かをしているのが好きで、動いていないと嫌なんです。PDにしたのもそれがあるからですね。工芸品もデザインが浮かんだらすぐに絵に描いて、つくり始めたら終わるまでやらないと気が済まないんですよ」。

最後に「私は手術が嫌で悩んで悩んで、ご飯も食べられないくらい体調が悪くなってしまいましたが、これからの方には考え込まずに始めたらいいよと伝えたいです」とのメッセージをくださいました。

ドクター・ナースからのメッセージ

医療法人社団 仙石病院
腎臓内科 室谷 嘉一 先生

安部さんは透析施設がご自宅から遠いこと、とても活動的でまだいろいろやりたいとご希望があったことから、PDを選択され積極的に治療に取り組んでおられます。体調が回復し食べる量が増えたことで、むくみが出たりもしましたが、栄養指導を受けてもらい今は落ち着いてきました。また、われわれのチームと一緒になって、先輩としてこれから透析導入という方にアドバイスをしていただいていて、助かっています。今後も元気に透析を続けていただき、また力を貸してもらえるとよいなと思います。

看護部長 佐々木 由佳さん

この治療を選んで、自分の生活スタイルを取り戻せたことがすごくよかったと、他の患者さんにも話してくださっています。また作品をつくることができると喜んで、生き生きとされている安部さんを、これからも支えていきたいと思っています。

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