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巻頭特集

2020年スマイル春号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

自分の足で歩き続けるために
~足の健康を考える~

皆さんはご自身の足を毎日見ていますか? 足の病気はあまり知られていないため、病気が進行してから見つかるケースも多いといわれています。今回の特集では、腹膜透析(PD)患者さんが健康で歩き続けるために大切な“足”について教えていただきました。

左から岩﨑さん、安田先生

パナソニック健康保険組合
松下記念病院

安田 考志 先生
腎不全科 部長/足病診療科 部長
岩﨑 祐子 さん
看護部 外来師長/足病診療科 看護師

足のトラブルとは?

透析患者さんに足のトラブルが多い
理由を教えてください。
安田先生
透析患者さんには、動脈硬化をお持ちの方が多くいらっしゃいます。動脈硬化は脳や心臓の血管だけでなく、足の血管でも起こりやすいことはあまり知られていません。また、病院で靴下を脱いで足を診察してもらう機会も滅多にありません。そのため、気付かないうちに足の血管の動脈硬化が進んでしまうのです。特に、糖尿病を合併し神経障害がある患者さんでは、足が傷ついていても痛みに気付かず、放置してしまう場合があります。
動脈硬化によって血流が滞ると傷の治りが遅くなり、最悪のケースでは足を切断することになります。足を切断すると、歩行や活動に支障が出て日常生活動作(ADL)が低下し、寝たきりへとつながるばかりでなく、生命予後にも悪影響を及ぼすといわれていますので、足のトラブルを早期に発見し、ケアすることが重要なのです。
岩﨑さん
透析患者さんは高齢の方が多く、加齢に伴い眼が見えにくくなり足先がよく見えない、足の裏を見る姿勢が取りにくいといった問題が出てきます。こうした視力や関節の動きの衰えも、足のトラブルを見過ごしてしまう一因です。PD患者さんの場合は、おなかに透析液を入れるため、足が見えづらくなることもあるようです。
どのような足の症状に気を付ければよいでしょうか。
安田先生
血流が悪くなると爪の形が変わります。特に、巻き爪(陥入爪)は皮膚を傷つけるので要注意です。他にも、足が痛い、冷たい、痺れる、つるといった症状や足の状態がいつもと違うと感じたら、主治医や看護師に相談しましょう。また、足が乾燥していると皮膚のバリア機能が損なわれ、傷つきやすくなり、感染もしやすくなります。皮膚の乾燥にも気を付けましょう。

“足病診療科”で行うこと

松下記念病院には足病診療科がありますが、どのような診療をしているのでしょうか。
安田先生
欧米では靴の文化が発達しているため、足病科という診療科が古くからあります。しかし、明治維新以降に靴を履く文化が始まった日本では、足を専門に診る医師はまだ少なく、大阪府で足病診療科がある施設は当院を含めて2ヵ所のみです。
当院の足病診療科では足病外来、フットケア外来、フットウェア外来の3本立てで診療を行っています。医師が担当する足病外来では、検査・診断を行い、治療方針を決めます。診断の結果、治療が必要な方には治療を施し、足のケアが必要な方には看護師によるフットケア外来を受診してもらいます。フットウェア外来は靴の外来です。欧米で修行した靴の専門家に、患者さんの足に適した靴をつくってもらう場です。この3つがそろうことで、足の傷が治り、健康な自分の足で歩けるようになるのです。
病院ではどのような検査をするのでしょうか。
安田先生
足の血管に動脈硬化があるかどうかを調べることが重要です。視診、触診に加え、ABI(足関節・上腕血圧比)という指標で、足の動脈の狭窄・閉塞を評価します。上腕と足首の血圧を同時に測定するもので、患者さんへの負担はかからない検査です。また、SPP(皮膚灌流圧)測定や下肢動脈エコーなどを行い、治療方針を決定します。
治療について教えてください。
安田先生
動脈硬化に対する治療をメインに行います。血管を広げるカテーテル治療やバイパス手術など、心臓の血管に対する治療と同じです。血液透析(HD)患者さんでは、LDL吸着療法を行うこともあります。また、遺伝子治療や自分の細胞を利用した血管再生医療も開発が進んでいます。
フットケア外来では、どのような診療を行っているのでしょうか。
岩﨑さん
まずは足を見ること、触ることから始めます。足の温度や色、皮膚の状態(乾燥や汚れの程度)などは見て触ると分かります。その際に、たこ(胼胝)やうおのめがあればケアします。特に重要なのが爪のケアです。切ることができるものは切り、難しい場合はやすりで整えたり、機械で削ったりします。他にも、保湿・セルフケアに関する指導や用品の紹介も行います。
なお、ご自分で爪を切る場合、足の爪は丸く切ると巻き爪になりやすいので、まっすぐ切って角を落とすようにし、深爪に気を付けてください。ご自分で切るのが難しい場合は、無理をせず主治医や医療スタッフ(看護師、ヘルパー、ケアマネジャー、訪問看護師など)にご相談ください。

自宅で行うセルフケア

自宅でできる足のケア(セルフケア)の方法を教えてください。
岩﨑さん
毎日足を見る、触るのが基本です。特に足の裏や指の間など、普段目にしないところや見えにくいところも十分に観察しましょう。鏡を利用するのも1つの手です。ご家族やヘルパーさん、訪問看護師などに見てもらうのもよいですね。また、乾燥を防ぐためには保湿が重要です。市販のもので構いませんので、クリームを塗って保湿し、乾燥により傷ができるのを防ぎましょう。保湿ケアは足だけでなく、全身に行ってください。
毎日の生活の中で心がけておくことはありますか。
岩﨑さん
靴を履く前に中に小石などの異物が入っていないか、よく確認することが大切ですし、なるべく裸足で歩かないようにしましょう。また、ホットカーペットや電気毛布などを長時間使用したり、靴の中に使い捨てカイロを入れ続けたりしていると、低温やけどをする可能性があるので注意しましょう。
安田先生
足にトラブルを抱えている患者さんは靴のサイズが合っていない場合が多く、適切な靴選びが重要です。靴の中で足が動いてしまうと、足に傷ができる原因となります。履きやすいからと大きめの靴を履くのではなく、自分の足に合った靴を履きましょう。大型の靴店には調節を専門に行ってくれるシューフィッターがいるところもあるので、一度相談することをお勧めします。
岩﨑さん
大きめの靴を履くと、歩くときに足が前に滑って靴に当たり、指先に傷ができやすくなります。当日の足のむくみ具合に合わせて調整が可能な、ひも靴を履くことをお勧めします。
最後に、PD患者さんへのメッセージをお願いいたします。
安田先生
いつまでも自分の足で歩き続けられるよう、日ごろから自分の足をしっかり観察するようにしましょう。足に異常を感じたら、かかりつけ医療機関の医師や看護師に相談し、必要があれば専門の病院に紹介してもらいましょう。
岩﨑さん
最も重要なのは予防です。傷ができてからではなく、傷をつくらないように心がけ、1日でも長く自分の足で歩くということを目指してほしいですね。
足病診療科スタッフの皆さん 足病診療科スタッフの皆さん

松下記念病院の取り組み

腎不全科では、蛋白尿などの検尿異常から透析導入に至るまで、全ての腎疾患患者さんの治療に対応しています。特に、PDの導入や維持管理が可能な施設は多くありませんので、当院では積極的にPDを導入し、PDの啓発にも力を入れています。北河内医療圏において高いレベルの医療を提供することを目指し、近隣の医療機関とも連携しています。また、足病診療においては、「いつまでも自分の足で歩き続けることのできる人・街・文化を創ります」との理念の下、専門的な治療やケアを行える環境を整え、これからもPD患者さんやHD患者さんの足の健康を守り続けます。

病院データ

パナソニック健康保険組合 松下記念病院

パナソニック健康保険組合 松下記念病院

  • 〒570-8540
  • 大阪府守口市外島町5番55号
  • 電話 06-6992-1231(代表)
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