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巻頭特集

2020年スマイル夏号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

腹膜透析(PD)基本のおさらい

皆さんはPDのことをどの程度理解されていますか。今回の特集では、基本に立ち返ってPDについて復習し、見直すことをテーマにしました。PDをより良い状態で続けていただくために、基本をおさらいしましょう。

左から荒毛さん、平野先生、吉川さん

大阪医科大学附属病院

平野 一 先生
腎泌尿器外科 血液浄化センター特務教員講師
泌尿器科学教室 兼務
荒毛 治菜 さん
看護師
吉川 なつき さん
看護師

腹膜透析(PD)の仕組みと治療の基本

PDはどのような仕組みで
血液を浄化しているのでしょうか。
平野先生
まず、「腹膜」とは肝臓や胃、腸などの内臓の表面や腹壁の内面を覆っている膜を指し、内臓がこすれたり、ねじれたり、巻きついたりしないように保護、固定する役割を果たしています。お腹の中に畳まれていて表面積は約2m2と大きく、無数の細い血管が網目状に走っています。
腹膜に囲まれた空間を「腹腔」といい、水分を2Lほどためられるスペースがあります。PDはこの腹腔内に透析液を入れ、腹膜を介して血液中の老廃物や余分な水分を透析液に取り込み、老廃物や水分が十分に移行したら透析液を取り出し交換(バッグ交換)することで血液を浄化します。
PDの種類を教えてください。
平野先生
PDには、1日数回透析液を交換するCAPD(持続携行式腹膜透析)と、夜寝ている間に機械で自動的に透析液を交換するAPD(自動腹膜透析)があります。基本的にはどちらも選択できます。腎機能の状態やライフスタイルに合わせて、主治医と相談しながら選ぶとよいでしょう。
PDを行うのに適しているのはどのような部屋ですか。
吉川さん
治療を行うのは、手元が見えやすい明るい部屋が適しています。また、部屋の窓や扉を閉めて空気の流れを抑え、ペットを飼っている方は部屋に入ってこないようにし、ほこりが舞わないようにしましょう。
バッグ交換時に注意すべきことはありますか。
荒毛さん
バッグ交換時は細菌が入らないように手洗いと手指消毒をしっかりと行い、マスクを着用します。また、接続を手動で行っている方は、落下菌が入ることを防ぐため、接続部を上に向けないよう気を付けてください。
カテーテルやチューブの取り扱いで
注意することはありますか。
平野先生
カテーテルの出口部分が引っ張られて圧がかかると、カテーテルと皮膚の間に隙間ができて細菌が入りやすくなり、トンネル感染につながることがあります。カテーテルは、引っ張られないようにしっかり固定するよう注意してください。
吉川さん
お腹のチューブの収納にポシェットや腹巻きを使用されている方もいます。患者さんから教わったことですが、腹巻きの真ん中に穴を開けてチューブを通してから巻くと安定します。チューブの固定や収納については、おかかりの病院の看護師に相談してみてもよいでしょう。
その他、バッグ交換操作に関して
気を付けることはありますか。
平野先生
手技に慣れてくると、操作が自己流になってしまうことがあります。失敗は慣れたころに起こりやすいものです。記憶に頼らず、マニュアルを見ながら行ってください。
荒毛さん
透析液の袋を開けるときや、カテーテルを固定しているテープを外すときにはさみは使わないでください。特にテープを外すときは、カテーテルを間違えて切ってしまう恐れがあります。
平野先生
万一チューブを切ってしまった場合は、チューブを2~3回ぐるぐると巻いて結び、お腹の中と外が通じないような状態にしてビニールなどで覆い、すぐに受診してください。
普段の生活で気を付けることはありますか。
吉川さん
CAPD/APDノートは毎日記入し、外来受診時に持参してください。私たちは、外来の際にノートを見て患者さんの日々の状態を確認しています。また、排液の色の確認もお願いします。
平野先生
体重と血圧は毎日測定してください。同じ時間、同じ条件で測ることが大事です。また、水分や食事の制限が必要な場合はそれらを守ることも重要です。特に塩分摂取には気を付けてください。塩分を取り過ぎると体に水分をためてしまい、血圧も上がってしまいます。

PDについての素朴な疑問

排液の量が日によって違うのはどうしてですか。
平野先生
排液の量は水分の取り過ぎや汗をかくなど、その日の状態によって変化します。また、透析液の濃度によっても異なります。CAPDの患者さんは1回の排液の量に一喜一憂せず、1日の合計量で判断してください。体重の増減がなければ問題ありません。排液の量よりも体重の変化に注意が必要です。急に体重が増えた場合はカテーテルトラブルの可能性もありますので、主治医に相談しましょう。
吉川さん
おしっこが出ている人で排液の量が少ないことを心配される患者さんがいますが、水分はおしっことして排出されているので、体重が変わっていなければ大丈夫です。
なぜ他の患者さんと交換回数や
APDの治療時間が違うのでしょうか。
平野先生
残存腎機能など患者さんごとの状態によって、透析の処方は異なります。そのため、交換回数や治療時間が患者さんにより異なるのです。また、同じ患者さんでも残存腎機能が落ちてきたり、腹膜の状態が変化したりすると、透析液の濃度や透析液の量・交換回数を調整する必要があります。
バッグ交換の時間はずらしても大丈夫ですか。
平野先生
急な用事などで交換の時間が多少ずれても基本的に問題はありません。ただし、お腹の中に8時間以上透析液をためた状態にならないよう注意してください。長時間ためると、せっかく体の中から透析液側に移動した余分な水分や老廃物が再び体の中に戻ってしまう「再吸収」が起こります。ライフスタイルの都合により長時間交換ができない場合は、長時間(~12時間)ためておくことができる種類の透析液の使用も検討できますので、主治医に相談してみるとよいでしょう。
CAPDからAPDに変更できますか。
平野先生
CAPDからAPD、APDからCAPDのどちらも変更できます。ただ、残存腎機能によっては夜間のAPDだけでは難しく、APDと日中のバッグ交換の組み合わせが必要な場合もあります。当院には、平日はAPD、仕事がない日はCAPDにするなど、APDとCAPDを組み合わせて治療している患者さんもいます。このように、ライフスタイルに合わせて工夫できるのもPDのメリットの1つです。
PDはいつまで続けることができますか。
平野先生
腹膜を透析のために使う、つまり、透析液を入れ続けることで、腹膜は傷んで劣化してきます。腹膜が劣化すると物質交換ができなくなるため、週1回血液透析(HD)の併用やHDへの移行を考慮することになります。なお、腹膜は生体の膜のため個人差があります。
腹膜平衡試験(PET)などの検査で腹膜の状態を調べて判断します。
また、繰り返す腹膜炎などは、PDを中止する原因になりますので、感染を起こさないように日々の管理をしっり行うことが大切です。
PD患者さんへのメッセージをお願いします。
吉川さん
私が腎不全センターに配属されたときは、PDに関する知識はほとんどありませんでした。しかし、患者さんとともに勉強し、患者さんからいろいろなことを教わりました。これからもぜひ一緒に頑張っていきましょう。
荒毛さん
PDは自分で治療するため、難しいと思われる方も多いと思います。でも、毎日続ければできるようになりますので、難しく考えないでいただきたいです。看護師も精一杯指導しますので、一緒に頑張りましょう。
平野先生
PD治療の主役は患者さんですので、日々の自己管理はとても大事です。しかし、まずは人生を楽しんでください。それが一番大切だと思っています。治療がライフスタイルの妨げとならないよう、いろいろな工夫ができます。外来のときにでもぜひ相談していただいて、楽しみながらより良い人生を送ってください。
腎泌尿器外科スタッフの皆さん 腎泌尿器外科スタッフの皆さん

大阪医科大学附属病院 腎泌尿器外科の取り組み

腎泌尿器外科では、トータル・リーナル・ケア(TRC:全人的・包括的腎疾患治療)の概念に基づき、患者さん主体の医療の提供を心がけています。それを実現するため、2013年に慢性腎臓病(CKD)の管理、HD・PD導入、腎移植手術などを専門に行う組織として「腎不全・腎移植総合管理センター」を開設しました。腎代替療法の選択に当たっては、「相談外来」で患者さんのライフスタイルなどを聞き取り、時間をかけて治療法を説明し、患者さんの状態に適した医療の選択・提供に努めています。同院では、PDや腎移植を選ばれる患者さんが比較的多いのも特徴です。

病院データ

大阪医科大学附属病院

大阪医科大学附属病院

  • 〒569-8686
  • 大阪府高槻市大学町2-7
  • 電話 072-683-1221(代表)
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