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巻頭特集

2020年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

拡大スペシャル版 なんでも相談室

今回の特集は、綴じ込みはがきで寄せられた疑問やご質問に、先生方から回答をいただきご紹介する「なんでも相談室」の拡大版です。通常版よりたくさんのご質問に回答いただきました。安心して元気に腹膜透析(PD)ライフを送るために、ぜひともご活用ください。

前列左から白澤さん、辻本院長、上田さん。後列左から下村先生、一居先生、山﨑さん、藤原先生、竿谷さん

社会医療法人愛仁会 井上病院

辻本 吉広 先生
院長
下村 菜生子 先生
診察部 透析内科部長
藤原 木綿子 先生
看護診察部 腎臓内科部長
一居 充 先生
診察部 腎臓内科医長
上田 恵利子 さん
看護部 PD・訪問看護科長
山﨑 由美 さん
看護部 PD・訪問看護
白澤 瞳 さん
看護部 PD・訪問看護
竿谷 留美 さん
看護部 PD・訪問看護
出口部が心配で汗をかくことに消極的になってしまい、
あまり体を動かさなくなりました。
汗をかくような運動をしても問題ないのでしょうか?

(68歳 男性 PD歴3年6ヵ月)

辻本先生
汗をかくこと自体は全く問題ありませんし、水分管理のためにも運動をするのはよいことです。運動によって汗をかき、出口部が汚れてしまうことを心配されているようですが、運動後はシャワーでしっかりと汗を洗い流し、出口部を清潔に保つとよいでしょう。
上田さん
運動をする際はカテーテルを固定し、腹部を圧迫したり、体を過剰にひねる運動、また水泳などのマリンスポーツは避けてください。
山﨑さん
相撲やラグビーなどの体がぶつかり合うようなスポーツも控えてください。ランニングやバドミントンなどでしたら、体を少し激しく動かしたいと考えるPD患者さんに向いています。
新型コロナウイルスが心配で、外に出る機会が減りました。
運動不足はよくないとは思いますが、どのような影響があるのでしょうか? 
室内でもできるよい運動があれば教えてください。

(72歳 女性 PD歴2年2ヵ月)

辻本先生
高齢の患者さんは運動不足になると筋肉量が減ってしまい、サルコペニアになる可能性があります。サルコペニアとは、加齢や病気のため筋肉量が減少し、全身の筋力および身体機能が低下した状態を指します。サルコペニアになると、さまざまな合併症が生じやすくなります。筋力を維持するためには、室内でもできるだけ体を動かすことをお勧めします。
竿谷さん
ストレッチや椅子に座って行うラジオ体操など、室内でもできる運動があります。当院のリハビリテーション科では、4〜5月の外出自粛期間中に体力低下を予防するための体操を紹介したチラシを作成しました(図)。そこでは、立って行う運動としてはスクワットやつま先立ち、足踏みを、座って行う運動としては膝伸ばしやもも上げ、かかと・つま先上げを推奨しています。
図. 体操紹介
図. 体操紹介
PDを開始して3ヵ月がたちました。少しずつ体調も良くなってきていますが、排液中に強い痛みがあります。
痛みの原因としてどのようなことが考えられますか?
また、痛みをなくす方法があれば教えてください。

(84歳 女性 PD歴3ヵ月)

下村先生
排液中の痛みの原因として、お腹の中にあるカテーテルの先端が周りの臓器に当たることによる刺激や、排液時の吸引圧によるものなどが考えられます。

日々のバッグ交換を重ねることで痛みに慣れたり、徐々に痛みが軽くなったりする場合もあります。2、3ヵ月ほど様子を見ても痛みが治まらないようであれば、排液時に透析液を全て出し切らずに少しお腹の中に残すようにするなどの対処法も考えられますので、主治医と相談してみましょう。
月に数回、排液が乳白色になります。
体調は良く、乳白色の排液を検査してもらった際に細菌は検出されませんでした。
なぜ乳白色の排液が出るのでしょうか?

(79歳 男性 PD歴2年8ヵ月)

一居先生
排液が濁る最大の原因は腹膜炎ですが、今回のように腹膜炎を起こしていなくても排液が濁る場合があります。腹膜炎以外の原因としては、カルシウム拮抗薬という降圧薬の服用や脂肪がたくさん含まれる食事を摂取していることが考えられます。
辻本先生
薬剤が原因で排液が濁っているのであれば問題ありません。しかし、腹痛がなくても腹膜炎かどうかを確かめる検査は必要です。
下村先生
脂肪の多い食事が原因である場合は、栄養指導を受けて食事の偏りがないかを確認する必要もあるでしょう。いずれにしても、排液が濁ったときは患者さんご自身で判断せず、かかりつけの病院に連絡してください。
体中が痒くてたまりません。なぜ痒くなるのでしょうか? 痒みを抑える方法を教えてください。

(76歳 男性 PD歴2年3ヵ月)

藤原先生
痒みはいろいろな原因によって起こります。透析不足で痒みが起こる場合もありますし、まれにトウモロコシのデンプンが含まれた透析液(エクストラニール腹膜透析液)への過敏症から痒みが出る場合もあります。他にも、アレルギー性の痒みや乾燥性の痒みなどがあり、原因は多種多様です。原因が分かれば、それを取り除くことで対応できますので、まずは皮膚科の先生とも連携して、痒みの原因を調べることが大切です。透析不足や透析液が原因であれば治療内容の見直しで対応できますし、抗アレルギー薬など痒みを中枢で抑える薬剤を使うこともあります。

また、日常生活でできる対策は保湿がベースとなります。せっけんで洗い過ぎない、入浴時に長時間熱いお湯に浸からない(脂分を落とさない)、入浴後に保湿する、保湿できる入浴剤を使うなど、普段から保湿を心がけて生活するようにしましょう。
毎日カテーテルの出口を見るようにいわれています。
出口部を確認するときのポイントとして、赤くなっているか以外に気を付けることはありますか?

(68歳 男性 PD歴2年)

白澤さん
出口部を観察するときは、感染徴候(腫れ、熱感、痛み、膿が出ている)や出血がないかを確認してください。出口部だけではなくトンネル部やチューブの下側も観察しましょう。また、見るだけでなくトンネル部を軽く圧迫してみて痛くないか、膿や汁が出てこないかも確認してください。消毒薬で皮膚がかぶれたり、乾燥したりする場合もありますし、ガーゼを止めるために貼ったテープの部分がかぶれてしまう方もいます。
上田さん
テープかぶれなどによる皮膚トラブルについては、当院でもよく相談を受けます。テープの種類を変えたり、貼る位置を工夫したり、ときにはガーゼの種類を変えたりして対応しています。テープではなく腹巻きなどを使って固定するのもよいでしょう。かぶれがひどい場合は、塗り薬の処方が必要になることもあります。
下村先生
膿が出る、真っ赤になっている、痛みがひどいといった場合は、すぐに受診することをお勧めします。
カテーテルの出口部にときどき肉芽ができます。
ついつぶしたくなりますが、つぶさない方がよいのでしょうか?治療法はありますか?

(67歳 男性 PD歴3年)

上田さん
肉芽はカテーテルが引っ張られたり、固定の仕方が悪かったりするとできやすくなります。私たちは肉芽を感染徴候の1つとして経過を見ていますので、むやみに触ったりつぶしたりしないでください。肉芽ができた場合は、固定方法などに問題がないか病院スタッフに確認してもらいましょう。また、ガーゼの付着が刺激となって肉芽ができる場合もあるため、付着防止の軟膏を塗ることもあります。
辻本先生
状態がよくない肉芽の場合は、硝酸銀で焼灼して縮小・退縮させることもあります。
最近尿の量が減ってきたように感じます。同時に体重が増えてきました。このような場合はどうすればよいのでしょうか?

(60歳 男性 PD歴2年)

一居先生
体の中に入る水分量と出る水分量のバランスが偏っている可能性が考えられ、飲んでいる水分量と尿や透析で出している水分量の確認が大事です。また、塩分摂取量が多いと、体に水分がたまりやすくなります。つまり、水分だけでなく塩分摂取量も見直す必要があります。

他には残っている腎臓の働きが低下すると尿量が次第に減ってきます。その場合は、利尿薬の用量を増やしたり、ブドウ糖濃度が高い透析液を使ったりすることもありますが、ブドウ糖濃度が高い透析液は腹膜への負担が大きくなりますので、まずは食事の見直しを行うようにしています。
寝ている間に足がつることがよくあり、困っています。
足がつるのはPDと関連がありますか? 対処法があれば教えてください。

(73歳 女性 PD歴6年3ヵ月)

藤原先生
足がつるのは、脱水気味のときや電解質が急激に変化したときといわれています。PDでは透析に伴い電解質が急激に変化することはありませんので、まずは体重が適正かどうか、水分が足りているかを確認してみるとよいでしょう。体重や水分に問題がないのに足がつるのであれば、つり止めの漢方薬がありますので主治医に相談されるとよいと思います。
一居先生
高齢者では腰椎の疾患がある人も多く、足がつる原因となっている場合があります。また、普段から片方の足が疲れやすい人は、動脈硬化の影響で血管が細くなっている可能性があります。頻繁に足がつる場合は主治医に相談しましょう。
腹膜炎に気を付けるようにと指導されたため、しっかりと手洗いをして、バッグ交換のときにも気を付けています。
腹膜炎を起こしてしまうとPDが続けられなくなるのでしょうか?

(50歳 女性 PD歴6ヵ月)

下村先生
腹膜炎を起こしたからといって、必ずしもPDが続けられなくなるわけではありません。ただし、腹膜炎の原因となった細菌の種類によってはPDをいったん中止し、しばらく休止する場合があります。また、頻回に腹膜炎を起こしている場合は、PDを中止する目安にすることもあります。
山﨑さん
当院では腹膜炎の治療は入院で行っていますので、入院中に看護師がバッグ交換の手技を一通り確認します。手洗いの方法や空調を止めるなど、基本的な対策を忘れている方も少なくありませんので、腹膜炎を繰り返さないよう、この機会に再度確認してもらっています。
現在は日中バッグ交換をするPDを行っていますが、夜間の自動腹膜透析(APD)を勧められています。
ただ、水害の多い地域に住んでいることもあり、停電が不安です。停電したときはどうしたらよいのでしょうか?

(76歳 女性 PD歴2年2ヵ月)

上田さん
水害など、気象状況による危険が予測されるときには、APDから一時的に日中手動で行っていただく方法に切り替えるなど、処方の工夫で対応が可能です。また、突然の災害や停電などの場合は、決まった時間だからといって無理にバッグ交換はせずに、安全が確保されてから行えば大丈夫です。災害時は気が動転しがちですが、慌てず安全を確認することが何よりも重要です。当院では緊急時の対応について、マニュアルを作成してお伝えしています。機械の特徴なども含め、緊急時の対応をかかりつけの病院に確認しておくと安心です。
PD患者さんへのメッセージをお願いします
辻本先生
PDは患者さんが自宅で行う治療のため、不安な点がたくさんあると思います。ですが、どこの病院でもPDに携わるスタッフは熱心な人ばかりですから、ちょっとしたことでも遠慮なく質問してください。1人で抱え込まずに相談すれば前向きな気持ちになり、PDを長く続けていくことができると思います。

社会医療法人愛仁会 井上病院の取り組み

井上病院では、「PDファースト」を方針に掲げ『“あなたらしく”を支援する』治療として、積極的にPD診療に取り組んでいます。通院が難しい高齢のPD患者さんに対しては、訪問診療を行ったり、訪問看護ステーションや療養施設との連携を強化するなどの支援を行い、また最近では、血管や心臓のトラブルを抱えながら血液透析(HD)を行っている患者さんに対し、PDへの切り替えを提案する「いつでもPD」という取り組みも開始しました。HDからPDへの切り替えには十分な説明と支援が必要ですが、PDに変更することにより、自宅でゆっくり過ごす時間が増えたり、透析中の血圧低下やシャントトラブルから解放されることが期待されるため、力を入れています。

同院でPD治療に主に携わるのは、医師4人と看護師4人で構成されるチームです。しかし、カテーテル手術では外科が、栄養指導では栄養管理科が、運動療法ではリハビリテーション科が関わり、全ての病棟がPDに対応できるなど、病院全体が1つの大きなチームとなって、PD診療を支えています。

病院データ

社会医療法人愛仁会 井上病院

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  • 〒564-0053
  • 大阪府吹田市江の木町16-17
  • 電話 06-6385-8651(代表)
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