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患者の達人

2019年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

PDに変えて山間の村で
穏やかな日々を過ごしています

患者の達人

菊谷 良次さん(86歳)

PD歴:8ヵ月
独立行政法人 国立病院機構 大阪南医療センター

奈良県の西南端に位置し、和歌山県と隣接する野迫川村。村の北部には真言密教の総本山・高野山、南部には伯母子岳や護摩壇山が険峻な山容を見せて連なり、急峻で標高が高い土地柄です。林業で足腰が鍛えられた菊谷良次さんは、86歳の現在でも高低差が大きい村内を元気に散歩しています。

通院の送迎をしてくれる
息子の負担を考慮し、HDからPDへ

2018年春のこと、朝目覚めた菊谷さんはめまいを感じました。普段とは異なり、初めて感じるめまいだったため救急車を呼び病院へ行ったところ、心筋梗塞と診断され、急遽手術を受けました。ちょうどそのころ、50年近く患っていた糖尿病の主治医の先生から「そろそろ透析を始めなければいけない」と言われていたこともあり、心筋梗塞の手術後、4月に血液透析(HD)を導入しました。

菊谷さんが暮らす野迫川村の近隣にはHDを行っている病院はありません。そのため、2日に1度車で片道1時間半ほどかかる和歌山県橋本市にある病院まで通うことになりました。近くに住む息子さんに病院までの送迎を頼んでいた菊谷さんは「仕事をしている息子に厄介をかけるのが申し訳なかった」と話します。息子さんへの負担を減らしたいと考えていた菊谷さんは、自宅で治療ができるPDのことを耳にしました。「透析を始めたときは知らなかったけれど噂で知り、先生に聞いたところ『いいよ』と言われて」とPDに変更することを決意します。

12月に大阪南医療センターでお腹にカテーテルを入れる手術を行い、夜寝ている間に機械で自動的に透析液を交換するAPDを導入しました。機械の操作を1週間ほどで覚えることができた菊谷さんは「退院できるのはお正月を越えると言われていたけれど、思いの外、機械の操作を早く覚えることができたので、先生に褒めてもらえた」とうれしそうに語ります。12月27日に退院し、自宅でお正月を迎えることができました。

スタッフの皆さんと。前列左から畑中先生(主治医)、菊谷さん、息子さん スタッフの皆さんと。前列左から畑中先生(主治医)、菊谷さん、息子さん

PD治療が仕事、家族の手助けがありがたい

PDへの変更後も、体調は良好で食欲も旺盛という菊谷さんは、毎日20時半ころから6時くらいまで治療を行っています。排液の処理などは奥様に手伝ってもらっていますが、機械の操作は全て1人で行っています。「お腹のチューブを踏んだりして機械がピーピーと鳴って起こされるときもあるけれど、それ以外は機械につながっていても平気でよく眠れる」と話す菊谷さん。APDの片付けを終え、7時に朝食を食べた後は、テレビで好きな歌番組や高校野球、大相撲中継などを見てのんびりと過ごしています。天気の良い日には散歩に出かけ、1時間ほど自宅の周りを歩くことも日課の1つです。

2019年の5月には肺がんが見つかり、大学病院で手術を受けました。転移もなく、2週間で治療は終わりましたが、 術後に横隔膜交通症を発症し、PDを続けられるかが心配されました。しかし、通院回数の少ないAPDを続けられるようにと、治療が行われ、現在でも問題なく治療を続けています。

透析を開始するまでは調理師の奥様が営んでいる食堂を手伝っていましたが、今では「PD治療が自分の仕事」と言う菊谷さん。「PDは毎日休みがないのがしんどいと思うことはあるけど、家で過ごせるし、HDのように針を刺される痛さがないのがいい。機械の操作はやってみたら割と簡単に覚えられたし、すぐに慣れるよ」と穏やかに話します。そして、「機械の操作は1人でできても、それ以外のことは家内や息子に助けてもらって家での治療ができている。家族の手助けはありがたいね」とご家族への感謝の言葉を口にし、笑顔を見せました。

ドクターからのメッセージ

大阪南医療センター 腎臓内科
畑中 雅喜 先生

菊谷さんは比較的ご高齢ではありましたが、林業をされていたこともあり足腰が丈夫で、お話をしていてもしっかりされている印象でしたので、PD も可能だと感じました。さらにご自宅がHDの病院から遠いことを知り、こちらからもPDを勧めさせていただきました。
HDからPD への移行に際しては、APDの機械を使用し、われわれの想定以上にスムーズに操作ができるようになりました。横隔膜交通症を発症した際はPDの継続が危ぶまれましたが、「(HDでは送迎してもらう)息子に迷惑がかかるからPDを続けたい」という菊谷さんの言葉が印象的でした。現在は元通りPDを継続できていますので、この状態を可能な限り続けていけるようにわれわれも協力できればと思っています。

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